日本商工会議所の三村明夫会頭は11月21日、首相官邸で開催された「第3回全世代型社会保障検討会議」に出席した。三村会頭は、社会保障制度改革の議論の中で現在、主な改革項目として挙げられている短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大について、「中小企業経営に大きなインパクトを及ぼしかねない」と強調し、慎重な議論を行うよう強く求めた。
政府は短時間労働者に対する被用者保険の適用について、現在、「従業員501人以上」となっている企業規模要件の引き下げを検討している。適用拡大による短時間労働者1人当たりの事業主負担は年間約24~25万円となり、最低賃金を一気に1000円まで引き上げた場合とおおむね同程度の影響があると考えられる。
三村会頭は、「多様な働き方や女性の社会進出を踏まえ、将来の安心を確保する社会保障制度の構築は大変重要であると認識しているが、その一方で、社会保険料の半分は、中小企業を含めた企業側が負担しているという実態もある。中小企業は大企業と比較して利益率が総じて低く、労働分配率もすでに高水準となっており、最低賃金の引き上げや働き方改革など、対応すべき課題が山積している」と述べ、こうした中でのさらなる負担増は、中小企業に大きな影響を及ぼすとして懸念を示した。
さらに三村会頭は、「適用拡大による影響は業種によっても異なり、特に、パート比率の高い卸売・小売業やサービス業などで深刻と思われることから、そうした業界の声をよく聞きながら検討することが必要」と主張し、安易な適用拡大を行わないよう要請した。また、適用拡大により、専業主婦層をはじめとする適用を望まない層による就労調整がさらに進むことが予想されるため、三村会頭は「人手不足を加速させる恐れもある」と指摘。適用拡大について慎重な議論を行うとともに、今後の社会保障制度改革の議論に当たっては、雇用の7割を占める中小企業の実態を踏まえた検討を行うよう要請した。
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