京都商工会議所はこのほど、ソフトバンク、長崎大学と「京都観光動向の変化と経済的影響に係る共同研究」を開始することを発表した。同事業は観光で京都を訪れる日本常住者の人流を分析することで、最適な観光・まちづくり政策や企業支援策を検討するとともに、国内観光客の回帰やインバウンドとの共存など観光課題の解決に向けた取り組みを進めることが目的。国内観光客の京都離れが示唆されている中で、ポストコロナ時代の京都における観光産業の実態把握を行う。
共同研究に至った背景には「最近国内観光客が減少している」という同所会員企業からの声や、同所観光産業委員会の中でオーバーツーリズムの深刻化に伴い、これまでの観光施策をより実効性のあるものにつなげるためにデータ収集と分析が不可欠との意見が挙がったことがある。
そのため、今回の共同研究では携帯電話の位置情報データを活用して季節や時間帯ごとの人の動きを把握。①コロナ前後における日本常住者による観光動向②観光客構成の変化による経済的影響③特定地域の人口データに基づく観光需要の特性評価――などについて分析する予定だ。
各機関の役割として、同所は分析結果の公表、政策の検討・提言、ソフトバンクは携帯電話の位置情報を元にした日本常住者による京都の各地域における人口データの提供と分析、長崎大学は研究リードを行う。今後、宿泊施設の宿泊者数、公共交通機関の乗降客数、お土産物店舗、飲食店の売上高などを人口データと重ねて多角的な分析を行い、同所の政策提言に活用する。
7月23日に開催した記者発表で同所の堀場厚会頭は「インバウンドの増加により売り上げが落ち込む地域密着型の事業者がいることも事実。京都をより訪れやすく、魅力ある都市としていくために、会員企業や地域住民の役に立てるよう真摯(しんし)に取り組んでいきたい」と述べた。