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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 中国Eコマースの今後

全国の零細商店をコンビニのように系列化する生鮮スーパー「7fresh」の店内の様子

8月下旬、縁あって中国のEコマース第2位の京東(ジンドン)(JD.com)の本社や物流センターを訪ねた。北京市南部の新しい経済開発区にある本社は2万人が働く巨大ビル。エレベーターで上層のオフィスフロアに降りたって、思い出したのは昔見た、ある日本企業の本社だった。リクルートである。目標や売り上げ実績、目標達成した社員の名前などが壁に所狭しと貼られ、天井からパーティー用の色とりどりの装飾がぶら下がる。急成長期の企業特有の熱気と自由さが社内に満ちあふれている。

今、京東が最も力を入れている分野の一つが日本のベビー用品や加工食品。中国では都市部だけではなく、最も貧しい内陸農村でも粉ミルクやおむつなどは日本をはじめ外国企業の商品しか売れない。出稼ぎに出た息子夫婦が預けていった子どものために年収の半分を使う老親もいるのだ。

日本の商品が歓迎されるのは「安全・安心」だけではない。パッケージのきめ細かさ、丁寧な取り扱い説明書、中国人にぴったりくるサイズ感なども重要だ。10~15年前の勃興期の中国のEコマースは模倣品、偽造品が多く、消費者は泣き寝入りだった。その中で、偽物は絶対に取り扱わないと宣言したのが京東の創業者、劉強東だった。偽造品の追放と商品の丁寧な取り扱いのため、自前の物流網を作り上げた。本社と併せて視察した物流センターは巨大ではあったが、自動倉庫も出荷ロボットも改めて驚くほどではない。驚くべきは『ラストワンマイル』の配達員まで含め、17万人を正社員として雇用していることだ。

京東は以前、本コラムで紹介したように生鮮スーパー『7fresh』や米ウォルマートのウェブ店舗、全国の零細商店をコンビニのように系列化し、商品を卸供給するなど新戦略を次々に公表している。日本に調達センターも開設した。生鮮や日用品の担当者たちが共通して語ったのは「いい日本商品、いい日本企業があれば何十社でも紹介してほしい」だった。

裏返せば、中国は液晶テレビやスマホ、自動車など生産台数で世界トップではあっても、食品、日用品で自信をもって売れる商品は少ないということだ。そこに日本の中小企業が参入する自由な空間がある。需要が縮小する日本国内で価格競争を展開するより、Eコマース企業を通じて、中国市場を開拓すべきなのである。悩ましいのはもし手応えがよければ中国の需要規模に合わせ、工場拡張が必要になるかもしれないことだ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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