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アジアの風〜ビジネスの先を読む〜 コーヒーチェーンの新しい波

店内に小型ロボットやドローン、デジタル家電などを展示している「智能奶(乳)茶館」

中国で今、急成長しているコーヒーチェーンがある。それは「Luckin Coffee」。深圳(しんせん)、広州、上海、北京と中国のトレンド発信地から攻略し、すでに500店舗に達したという。

「Luckin Coffee」の特徴は店内での注文をスマホのアプリで行い、支払いもすべて電子決済という点だ。客がどの店で注文したかも、GPSで把握するという。中国で何か買い物をしようとすれば、アプリや電子決済は不可欠な時代に入ったが、スターバックスコーヒー(以下スタバ)をはじめとするコーヒーチェーンやファストフード店では、カウンター越しで店員に注文し、現金で支払える店が依然多い。その中で「Luckin Coffee」がこの手法に踏み切ったのは、顧客層を“デジタル・フレンドリー”な30歳代以下に絞り込む狙いがあるからだ。深圳のようなデジタル経済が牽引(けんいん)する街ではデジタル・フレンドリーな空気を持つ店の方が受けるのは当然。中国のEコマース大手の京東(JD)は「智能奶(乳)茶館(ジーナンネイチャグアン)」というミルクティーチェーンの展開を始めたが、店内には小型ロボットやドローン、デジタル家電などを展示しており、明らかにデジタル・フレンドリーな世代向けだ。

中国ではどこに行っても、スタバが目に付くが、「Luckin Coffee」はスタバとの差別化で成功している。価格はスタバの半分程度のコーヒー1杯20元前後。スマホのアプリで注文するため履歴を蓄積でき、5杯飲むと1杯無料になるサービスや、「友人にLuckin Coffeeを薦めると1杯無料」といったさまざまなプロモーションが可能になる。スタバが子どもから高齢者、学生からビジネスマンまで幅広い客層のため、デジタル・フレンドリーな世代から敬遠され始めている点にも着目している。

この連載でも紹介しているが、中国ではネット通販とリアル店舗の融合形態の生鮮食品スーパーや無人コンビニ、顔認証で入店から決済まで可能な家電量販店などデジタライゼーションによる小売業の革命が進んでいる。かつてなら中国らしさを売りにするところをデジタルで差別化しているのが新鮮だ。それは単に新しい技術の導入というだけでなく、小売業のウォルマート、コーヒー店のスタバのような業界の巨人の足をすくうための差別化戦略として、新規参入者が活用している点に注目すべきだ。

デジタライゼーションによる新規参入の流れは、東南アジア、インドにも広がるのは確実だ。

後藤 康浩(ごとう・やすひろ) 亜細亜大学 都市創造学部教授 早稲田大学政経学部卒、豪ボンド大学MBA取得。1984年日本経済新聞社入社、国際部、産業部のほかバーレーン、ロンドン、北京などに駐在。編集委員、論説委員、アジア部長などを歴任した。2016年4月から現職。アジアの産業、マクロ経済やモノづくり、エネルギー問題などが専門

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