今、2050年の世界を想定するのはかなり遠い先の難しいことに感じられるが、2000年に今年を想像するのと同じことだ。過去25年間にiPS細胞や量子コンピューターなど新技術が登場し、中国の台頭、グローバルサウスの出現など国際情勢も激変したが、その萌芽は00年にすでに存在した。それを重視しなかったことが驚きを生んでいるだけだ。とすれば、「2050年の世界」の兆候もすでに身の回りにあるはずだ。
グローバル情勢では、インドが今日の中国と同レベルまで台頭することは想定しておくべきだ。00年時点で中国のここまでの成長を予想できていなかったのと同じく、今、想像できない進化を2050年までにインドが達成することは高い確率で起きるだろう。
その萌芽を9月中旬に訪問したインド南部の都市ベンガルールで見つけた。10数年前に訪れた際にもタタ・コンサルタンシーなどIT大手が本拠を構えるインド有数のハイテク都市だったが、システム開発の下請けや英語圏向けのコンタクトセンターなど低コストを売り物にしたIT産業に限られた。
現在は、AIはもちろん先端的なサービスアプリやバイオ、航空宇宙などの分野で、世界の最先端にいる。言うまでもなく、若年人口の厚みが世界最大の研究開発人材のプールを形成し、インド工科大学を中核とする高度な教育が人材を磨いている。インドと中国の人口はまだ肩を並べているが、中国は今後、減少に向かう。特に日本を下回る低出生率によって生産年齢人口が急減し、2050年にはインドの55~65%程度になるとされる。中印の比較では高度人材、ワーカーともにインドにより大きな潜在力があるのは明らかだ。
特に注目すべきは航空宇宙分野だ。インドは23年8月に無人探査機の月面着陸に成功した。日本はまだ達成できていない快挙で、米ソ中に次ぐ4カ国目。しかも成功したチャンドラヤーン3号の総予算は61・5億ルピー(約105億円)と驚きの低コストだった。今、民間の宇宙開発競争が激化する中で、インドの航空宇宙技術は要となるだろう。すでに多数の航空宇宙分野のスタートアップが生まれており、米欧のベンチャーキャピタル(VC)が殺到している。
ベンガルールで訪問した日系VCのBeyond Next Venturesも、航空宇宙分野のスタートアップに注目していた。足元のトランプ関税や米中対立を忘れて、2050年のインドを想像してみると、何か新しいエネルギーが湧き上がってくる気がする。

