わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の違反事例のほか、公益財団法人全国中小企業振興機関協会がこれまでに実施したセミナーにおける質問や、日々寄せられる問い合わせの中から、特に参考になる事例をQ&A形式で解説します。今回は、下請法上、親事業者に課せられている禁止事項のうち、下請代金の支払遅延の禁止についてご紹介します。
Q 自社の製品である産業機械などの修理、保守・点検を顧客から請け負い、下請事業者にその作業を委託しています。支払は、下請事業者から提出される作業完了報告書の提出日を起算日とした、月末締め切り・翌月末支払です。下請事業者からの作業完了報告書が作業実施月の翌月に提出された場合、当該報告書の提出日を起算日として代金を支払うと、下請法上、問題となりますか。
A 支払期日の起算日となるのは、修理委託の場合は修理品を受領した日、現地修理の場合は修理が完了した日、役務提供委託の場合も保守・点検が完了した日であり、作業完了報告書の提出日ではありません。前月に作業が終了しているのに、月をまたいで提出された作業完了報告書の提出日を起算日として下請代金を支払うことは、貴社の支払制度の下では下請法上の支払遅延となりますので、注意してください。
Q 下請事業者に対して、物品の製造を依頼しています。支払制度を月末締め切り・翌月末支払としているところ、下請事業者から当月分の下請代金を翌月分とまとめて請求する旨の要望があったので、当月分の下請代金を翌月分の下請代金の支払時にまとめて支払いました。下請法上、問題となりますか。
A 下請代金の支払は、物品を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに支払わなければならないことから、仮に、下請事業者からの要望があったとしても、当月分の下請代金を支払期日までに下請事業者に支払わなければ、下請代金の支払遅延として下請法上違反することとなりますので、注意してください。
Q 下請事業者に対して、下請代金の支払制度を月末納品締め切り・翌月末支払(現金振込)としているところ、下請代金の支払日が金融機関の休業日となる6連休の初日に当たりました。支払日が金融機関の休業日に当たる場合には翌営業日に支払うことについて、あらかじめ下請事業者と書面での合意をしていましたので、6連休明けに順延して支払いました。下請法上、問題となりますか。
A 下請代金の支払期日が金融機関の休業日に当たる場合、①順延する期間が2日以内であり、かつ、②親事業者と下請事業者との間で支払日を金融機関の翌営業日に順延することについてあらかじめ合意・書面化しているときには、結果として受領(提供)日から60日(2カ月)を超えて下請代金が支払われても「下請代金の支払遅延の禁止」の規定に違反はしません。しかし、設問のように、2日を超えて順延したことにより、順延後の支払期日が受領(提供)日から60日を超えて下請代金が支払われるような場合には、下請法上違反することとなりますので、注意してください。
提供
公益財団法人 全国中小企業振興機関協会
(旧公益財団法人 全国中小企業取引振興協会)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営するなど、中小企業支援機関として各種事業を実施しています。
HP:http://www.zenkyo.or.jp
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