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2019年商業の動向 高まる商業者の存在価値

BtoCにおけるEC市場規模およびEC化率の経年推移

影響力の低下が言われるものの、今もテレビコマーシャルは消費マーケットの動向を知る上で重要な媒体である。最近のテレビコマーシャルから商業の動向を追ってみよう。

昨年春、国民的アニメ番組「サザエさん」のスポンサーが大きく変わった。これまで長らくコマーシャルを飾っていた東芝が降板、数社が新たなスポンサーとなった。その一つが、インターネット通販企業のアマゾンジャパンだった。

そこで登場するのが同社の戦略商品、対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカー(スマートスピーカー、商品名は「アマゾンエコー」)だ。現在、インターネットは音楽鑑賞や情報収集、買い物といったあらゆる日常に浸透しているが、そうした機能をパソコンやスマートフォンを介さずに「音声」のみで活用できる。

進む技術革新広がる脱・実店舗

米国では、すでに消費者の3分の1以上が保有しているといわれる一方、モバイル専門の調査研究機関「モバイルマーケティングデータ研究所」によると、日本では認知度は6割と過半数を超えるが、普及率は5%にとどまる。しかし、米国の今は日本の3年後といわれるように、これから日本の茶の間にスマートスピーカーが浸透していくことは想像に難くない。

米国の社会学者、エベレット・M・ロジャースが提唱した新商品が普及する過程を五つに分類する「イノベーター理論」に当てはめるならば、日本におけるスマートスピーカー市場は、革新者(市場全体の2.5%)から初期採用者(同13・5%)へと移行中の成長過渡期にある。それゆえアマゾンは、「サザエさん」に露出することで普及速度を上げようとしているのだろう。

もう一つ、近頃しばしば見かけるテレビコマーシャルに「メルカリ」のものがある。これは消費者同士の個人間売買(CC)を仲介するスマートフォン用のアプリケーションだ。

こうしたアプリは、国内では2012年に初めて登場した。「フリマアプリ」という名称で広がり、17年にはフリマアプリの市場規模は4835億円、前年比58・4%増と急成長している(経済産業省「平成年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」)。

そのフリマアプリの代表格が「メルカリ」であり、その市場創造力は従来の企業と消費者個人間の商取引(BC)を大きく浸食しつつある。かつて商品を購入するとき、消費者の多くは店を訪れた。しかし、今日ではほとんどの場合、スマートフォンで検索し、より安く、より早く、より便利に購入しようとすることが普及しつつある。さらにフリマアプリは、商業者を介さずとも欲しい商品が入手できる手段として成長を遂げている。

ちなみに、17年の企業と消費者個人間のEC市場規模は16兆5054億円、前年比9.1%増と成長を持続。物販分野のEC化率5・79%もこの数年で倍増している。

プロとしての知識こそ重要

こうした「脱・実店舗」「脱・BC」という消費動向は19年も続くだろう。では、従来のオールドモデルの商業者に希望はないのかだろうか。

否、こうした時代だからこそ、その分野のプロフェッショナルである商業者の存在価値は逆に高まる。私たち消費者は、自らが欲しいと認識している商品しか購入することができない。自分の知識を超えた〝最適〟と出合えたとき、初めて買い物は満足から感動に昇華する。

市場には私たちが知らないものの、価値ある商品はたくさん存在する。そうした商品と、そうした商品を潜在的に欲する消費者をつなぐことにこそ商業者の使命はある。その実現のために伝える技術も、かつては資本力が必要だったが、今日さらには近未来には中小事業者にも身近なものになる。情報発信、販売促進、顧客管理、顧客開拓なども、手のひらにのるスマートフォンを使えば低コストでできる時代だ。

これまでも重要であった商業者としての〝プロフェッショナルな知識〟こそ、そうした技術の利用価値をさらに高める。その意味で19年は、本物だけが生き残れる度合いを強くするだろう。 (商業界・笹井清範)