バックオフィス支援のケイリーパートナーズは、「1日2時間から働ける仕組み」をDXで実現した企業。子育てや介護など、制約を抱える人がチームで支え合いながら成果を出す―そんな新しい働き方を生み出した。短時間勤務でも高品質な業務を支えるその仕組みは、地域企業におけるDXの成功モデルとなっている。
短時間勤務にかかわらず 力を発揮できる職場づくり
ケイリーパートナーズは、地域企業のバックオフィス業務を支援するアウトソーシング企業。代表の鷲谷(わしや)恭子さんは、子育て期にキャリアを断念した経験をきっかけに、同じように時間に制約のある人が安心して働ける職場をつくろうと2019年に創業した。
当初から課題は明確だった。短時間勤務の社員が多い中で、一人に業務が集中しない体制、急な休みがあっても業務を止めずに続けられる体制が必要だった。
そこで鷲谷さんは、デジタルツール(後述)を活用した情報共有の仕組みづくりに着手。誰がどの案件をどこまで進めているかを「見える化」するため、資料や進捗(しんちょく)をクラウド上で一元管理した。マニュアルやチェックリストも整備し、誰が対応しても同じ品質で進められる仕組みを構築した。
さらに、業務を3人1組で担当する「ワークシェア体制」を採用。互いにフォローし合うことで業務を止めない体制を確立した。1人が休んだ場合、2人体制では一方に負担が偏るが、3人体制なら無理なく持続できるという考えだ。こうした“協働型”のワークシェアは、短時間勤務者が多い同社ならではの仕組みである。
同社では2時間から働けるが、6時間勤務をフルタイムとして位置付ける「短時間正社員制度」を導入。子育てや介護と両立しながら、正社員としてキャリアを築ける環境を整えている。フルタイムでなくても責任ある仕事に関われるよう、チーム内で「リーダー」「サブリーダー」を設け、パート社員もリーダー補佐として経験を積めるようにした。勤務時間ではなく、仕事の質やチームへの貢献度を重視した評価をしている。
DXが支える“ 止まらないチーム”
短時間勤務に対しては、当初「2時間勤務で責任を持てるのか」という顧客の不安もあった。しかし、業務の標準化とデジタル化を進め、「誰が対応しても同じ品質を保てる体制」を整えたことで信頼を得た。社員が抱える不安や課題は、オンライン会議やチャットでリアルタイムに共有。常に相談できる環境が、チームの安心感と品質維持につながった。
コロナ禍では、この仕組みが真価を発揮。創業時8%だったリモートワーク率は1年で85%に拡大。業務を止めずに支援を続けたことで、顧客から高い評価を得た。その実績が広がるにつれ新たな依頼も増えていった。
現在はリモートを中心に、一部対面支援を組み合わせた“ハイブリッド体制”で事業を展開。顧客からは「直接会いたい」という声も根強く、オンラインと訪問支援の両輪で信頼を築いている。
デジタルツールには情報共有を支えるグループウェア「サイボウズOffice」や勤怠・シフト管理を自動化する「ジョブカン」などを導入し、進捗共有やシフト管理をデジタルで一元化。ツールの重複を見直し、よりシンプルで効率的なDX環境への再構築を進めている。
さらに、社内で培ったノウハウを地域に還元する取り組みとして「マイクロDX支援」を展開。マイクロDXとは、クラウド会計やジョブ管理など、中小企業でも今日から始められる“手始めのデジタル化”のこと。属人化やアナログ業務の課題を抱える企業に対し、身近な改善から変革を後押ししている。ある支援先企業では、拠点ごとにばらつきのあった経理業務を標準化し、人件費を約半分に削減した。こうした小さな成功体験の積み重ねが、地域全体のDXを推進している。
鷲谷さんは、これからDXに取り組む経営者へこうアドバイスする。
「社内に小さくてもいいからDXチームをつくり、情報を集約する責任者を置くこと。外部の知見を入れること、特にセキュリティー対策では必ず専門家の協力を仰ぐこと。そうすることで『独り善がりのDX』になることを防げます」
この言葉は、同社の実践そのものを表している。
わが社のDX推進成功のポイント
課題
・フルタイム勤務以外でキャリアアップが難しく、短時間勤務者が活躍しにくかった
・業務の属人化により、休みが出ると業務が滞るリスクがあった
DX推進のための工夫
・業務を15~30分単位に分け、マニュアル化とクラウド共有で誰でも再現可能に
・3人1組のワークシェア体制で、突発的な欠勤にも対応
成果
・業務の標準化と共有でリモートワーク率を8%→85%に拡大
・マニュアル化とワークシェアで「誰が対応しても同品質」を実現
・デジタル活用で心理的安全性を高め、時短勤務でも主体的に発言できる風土を形成
・自社の実践を生かし、地域企業を支援する「マイクロDX」事業へ発展
会社データ
社 名 : 株式会社ケイリーパートナーズ
所在地 : 福島県郡山市台新1丁目31-9 山一ビル106
電 話 : 024-922-1321
代表者 : 鷲谷恭子 代表取締役CEO
従業員 : 19人
【郡山商工会議所】
※月刊石垣2025年12月号に掲載された記事です。
