日本商工会議所の三村明夫会頭が座長を務める経済産業省の「価値創造企業に関する賢人会議」の第2回会合が1月23日、都内で開催された。三村会頭は、「大企業と中小企業との共存共栄関係の構築は、日本の成長のため、競争力強化のためにも重要」と指摘。中間取りまとめに向け、個別具体的な共存共栄が進むような施策の実現に意欲を示した。「価値創造企業に関する賢人会議」は、取引構造の見直しや個別取引の適正化により大企業と中小企業が「新たな価値を創造」し、経済全体の付加価値向上を目指す「共存共栄の在り方」などを議論している。2月中に中間報告を取りまとめる予定としている。
中小製造業の実質生産性の伸びは大企業と遜色ないレベルにあるものの、労務費の上昇などを取引価格へ転嫁できないため付加価値が減ってしまい、この結果、名目的な生産性が低迷している。中小企業では労働生産性が4~5%伸びているものの、取引価格が適正ではないため、結果的に生産性の伸びは1%程度にとどまってしまっている。
このため三村会頭は、大企業によるサプライチェーン全体の利益率や生産性を向上させる対策の必要性を強調。「技術や改善活動など必要なサポートに加え、価格低減ありきではない付加価値に基づく適正な取引価格を尊重する機運醸成を先導してほしい」と述べた。また、下請中小企業振興法における「振興基準」の運用、個社による取引方針の自主的な宣言と政府が関与するウェブページでの公表などについて意見を述べた。
梶山弘志経済産業大臣は、「中小企業は個々の事業者による生産性向上に加え、企画、製造、販売といった一連のバリューチェーン全体で、大企業と共に価値を創造していく必要がある」と指摘。①取引適正化について、荷主企業と物流事業者が相互に協力して物流を改善する「ホワイト物流推進運動」を参考に、従来の業界団体による取り組みに加え、新たに個社による取り組みを促す仕組み、②取引適正化の浸透を図るため、「直接の取引先を通じて、その先の取引先に働き掛ける」対応を進めるなど、サプライチェーン全体の共存共栄を実現するための仕掛け、③ドイツで中小企業が大企業と共存共栄の関係を構築し、利益率も高水準となっていること踏まえ、これを参考とするため、ドイツとの政府・企業レベルでの交流促進、④個別取引の適正化に向け、望ましい取引慣行を盛り込んだ「振興基準」において、どのような場合に所管大臣が指導・助言を行うのかに関する考え方の明確化の4点について検討を進める考えを述べた。さらに、「賢人会議による検討の成果を、次の政府の成長戦略にしっかり反映させる」と意気込みを示した。
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