鳴門市特産のれんこんを活用 華やかでおいしいピクルスを開発
花れんこん 代表 齋藤 住子(さいとう・すみこ)
フラワーデザイナーの経験を生かした商品づくり
当社花れんこんは、徳島県鳴門市産のれんこんを、蓮(はす)の実や茎までまるごと使ったれんこんピクルスをつくっています。見た目も楽しんでいただけるよう色鮮やかなパプリカなどを加え、素材一つ一つを花に見立てて容器の中にレイアウトしており、ギフトに最適です。
私は、鳴門市で9代続くれんこん農家に嫁ぎながら、フラワーデザイナーとしてウエディングブーケやリースの制作、イベント会場の装花などに40年以上携わってきました。「あなたは自分の仕事を持つことに恵まれた数少ない女性の一人だから」と義母や夫に支えられ、畑仕事に携わることなく花の仕事を続けてきましたが、「自分も何かれんこんに関わることをしたい。れんこんの魅力を自分らしい形で伝えられたら」との思いをずっと抱いていました。2013年にれんこん農家女性会の推薦を受けて農産加工品のコンクールに参加し、出品したれんこんのピクルスが受賞。これを機に、ピクルスの商品化を考えるようになりました。
食品事業を始める以上、安心・安全が大切です。添加物や酸味、加熱時間を極力抑えて鳴門産れんこんの特徴であるシャキシャキした食感を長く保つ製造技術を確立するため、専門機関で研究開発を行いました。れんこんに特化した、ほかにないピクルスにしようと蓮の実や茎を加え、地元産の和三盆糖でまろやかな味に仕上げているので、液までドレッシングとして活用できます。また「鳴門のれんこんはきれい」というイメージをつくるためデザインを重視し、スペインの画家ジョアン・ミロ(1893―1983年)の絵のような華やかさを目指しました。
鳴門れんこんを世界へ伝える
創業当初は販売に苦労しましたが、地域の小規模事業者と連携して催事や情報発信を行い、地道に販路開拓に取り組んで活路を開いてきました。ANA国際線ビジネスクラスの機内食や新幹線グランクラスの軽食に採用されたことで、今では取引先も増えています。
しかし、国内でも鳴門のれんこんを知らない方は多く、欧米では蓮は観賞用で、れんこんを食べる文化が根付いていない地域が多くあります。鳴門のれんこんは粘土質の硬い土壌で育つため食感がよく真っ白なのが特徴です。これを一本一本丁寧に掘り起こす作業は大変な重労働。この丹精込めて育てられた鳴門のれんこんを、今後は国内・世界へ広く伝えていくことが私の使命と考えています。
丁寧にれんこんを手掘りする作業は、私にはガラス職人の仕事にも重なって見え、「いつか鳴門を高級クリスタルガラスの産地であるフランスのバカラ村のようにしたい」との思いから、当社のイメージカラーをバカラのような赤にしました。今は当社の商品を通じて多くの人を笑顔にできると実感しています。鳴門は四国遍路八十八カ所の出発地でコウノトリの飛来地でもある自然豊かなまち。微力ではありますが、周りの方に協力をいただきながら鳴門のれんこんの普及に貢献できれば幸せです。
会社データ
社名:花れんこん
所在地:徳島県鳴門市大津町段関字東の越106
電話:088-624-8358
創業:2015年
事業概要:製造・小売り・食品加工業(特産物をデザインすることによるブランド化、商品開発と製造、販売)
HP:http://www.hana-renkon.com/
※月刊石垣2020年3月号に掲載された記事です。
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