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テーマ別企業事例 日本一、世界一になるには理由がある! シェアNo.1企業のプライド

事例4 雑穀品種取り扱い日本一が販路拡大に貢献、事業転換を促した

種商(佐賀県鳥栖市)

キビ、アワ、ヒエ、アマランサス、黒米……主食作物であるイネ、コムギ、トウモロコシ以外の穀物を「雑穀」と呼ぶ。佐賀県鳥栖市に営業本部を置く種商は、雑穀・健康食品、米穀・加工用米、豆類の製造や加工、販売を手掛ける。同社の日本一は200種類以上という雑穀の取扱品種の多さにある。

女性社員たちが企画した冷凍おにぎり「スーパーフードライスボール」はクラウドファンディング(CF)を活用した販路開拓を行った。女子会などで「映(ば)える」ことを意識

食糧としての雑穀から健康食品としての展開に

雑穀の取扱品種を増やすことはたやすいことではない。雑穀を生産する農家にいきなり「この品種が欲しい」と頼んでもつくってもらえない。作物は収穫までに時間も手間もかかるので、「種商さんなら長く買ってくれるから」という信頼関係を築いて初めてつくってもらえるようになる。取扱品種の日本一は、農家からの信頼が日本一の証しともいえる。

種商の前身は、福岡県久留米市の穀物商。1946年に創業し、48年に会社を設立。ちょうど戦後の食糧難の時期だった。 社長の諸冨和馬さんは、創業者から聞いた話として、創業の経緯をこう語る。

「当初は、食糧を扱う会社だったのですが、米が貴重品で量が集まらず、お客さまのおなかを満たすために、米の代わりの雑穀や豆類、卵も扱っていたと聞いています。最初のうちは雑穀の売り上げが多かったのですが、世の中が豊かになっていくにつれて米の扱いが増えていきました」

ところが、昭和の終わり頃から、白米摂取と生活習慣病の関係が取り沙汰されるようになった。

「平成に入る頃、お客さまがご飯や煮物に雑穀を混ぜて食べているという話を聞き、それなら雑穀のブレンド商品を小売り用商品としてつくろうと決めました。もともとは豆腐店、豆菓子店といった加工食品メーカー向けの原料卸が主力事業だったのですが、そこを起点に、雑穀ブレンド商品を小売り用の健康食品として大手スーパーなどに売り始めました。1998〜99年頃の話です」

加工業者向け原料供給から消費者向け商品へシフト

5、6年前に加工食品向け原料供給(BtoB)と小売り向け商品販売(BtoC)の売上比率が逆転。現在は2対8の割合で小売り向け商品が多く売れている。

消費者の健康志向の高まりという追い風を受けて、大手スーパーや量販店に対する売り込みが成功したこと、EC(インターネット上での販売)をはじめとする通信販売が順調に推移したことなどが、逆転要因として挙げられる。諸冨さんは、BtoCに力を入れた理由をこう語る。

「原料供給では利益の確保が難しい。供給競争が激しく、差別化ができず、顧客のエリアは当社周辺に限られてしまいます。そこで小売り商品の販売に力を入れるようになりました。小売り商品はオリジナルのものなので価格競争が避けられ、商圏も国内はもとより海外にも広がりました」

とはいえ、スーパーの棚には「高機能性米」という触れ込みで、たくさんの商品が並んでいる。そのような中、同社の商品が選ばれるのはなぜか。

「原料には茎や葉のような異物が混じりやすいのですが、当社はそれを選別し精選する工程が優れているので最高級の商品に仕上げることができます。世界一の技術力とノウハウの蓄積があると思います。(総合スーパーのような)どこの大手ユーザーさんに出荷してもほぼクレームはありません」

経営・現場が一体となった努力のたまものだが、諸冨さんは「日本一の雑穀品種を扱うことで、自社商品だけでなく、OEM商品やPB商品も依頼されるようになり、大手ユーザーさんから工場監査、改善指導を受ける機会が増えたことから、当社にさまざまなノウハウが蓄積されていった」とも考えている。つまり、同社は雑穀品種の取り扱いで日本一となった結果、雑穀の選別・精選技術では世界一になったというわけだ。

同社にはもう一つ、日本一がある。2014年にハラール認証(イスラム教の戒律にのっとって調理・製造された商品であることの証明)を日本の雑穀メーカーで初めて取得したことだ。

「きっかけは東南アジアのビザ取得が緩和されるという情報を得て、インドネシア、マレーシアといったイスラム教の国からも訪日外国人が増え、ハラール認証の商品が求められると予測したことでした。その後、東京五輪開催が決まり、出荷は少しずつ増えています」

日本一獲得は従業員のモチベーションを高める

日本一になると従業員のモチベーションが上がるという。

「特に営業はセールストークがしやすくなりました。社内の商品企画の発案も活発に行われています」

例えば栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高いスーパーフードを使った冷凍おにぎり「スーパーフードライスボール」は、社内の女性社員が中心となって「映(ば)える」ことを狙って企画した結果、ヒット商品となった。商品企画担当の青柳咲子さんは、こう話す。

「誰もがアイデアをカタチにすることができる、一人一人の力を生かせる会社ですね。その会社に日本一があるのはうれしいですよ」

最終目標は雑穀の売上高日本一だ。「この業界にはガリバーがいて、当社は3番手くらいの位置にいます。そこで、これからも一つずつ日本一を積み上げていくことを目指します」。売上高日本一獲得はタフなチャレンジだが、同社なら達成する日も遠くないだろう。

会社データ

社名:株式会社種商(たねしょう)

所在地:佐賀県鳥栖市藤木町字若桜3-5

電話:0942-83-1311

代表者:諸冨和馬 代表取締役

従業員:40人

HP:https://www.tanesho.co.jp/

※月刊石垣2020年1月号に掲載された記事です。

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