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テーマ別企業事例 日本一、世界一になるには理由がある! シェアNo.1企業のプライド

事例3 顧客と開発、医薬品用遠心分離機で国内シェア70%を堅持

松本機械製作所(大阪府堺市)

遠心分離機の専業メーカー、松本機械製作所。医薬品をはじめ化学薬品や食品など幅広い分野で活用され、国内外での納入実績は5000台超、医薬品分野では国内シェア70%を占めるトップ企業だ。技術力はもちろん、顧客の声に耳を傾けながら使いやすさや品質重視の製品開発をしてきたことで、絶大な信頼を獲得している。

遠心分離機は用途に応じてさまざまなタイプがある

洗濯機の技術を生かして新分野に飛び込む

1939年に工作機械などの製作で設立した松本機械製作所が、遠心分離機を手掛けるようになったのは戦後まもなくのことだが、そのいきさつが興味深い。

「そのころ当社に、洗濯機の製造経験がある技術者が入社したので、近くに住む米国の駐屯兵を念頭に『洗濯機、修理します』と看板を掲げたところ、たまたま通りかかった製薬会社の方から『遠心分離機の修理はできませんか』と声を掛けられたんです」と同社四代目で社長の松本知華さんは当時のエピソードを語る。

話を聞くと、薬の製造工程でドイツから輸入した遠心分離機を使っているが、修理のために海外から技術者を呼ぶと多額の費用がかかる。そこで日本の遠心分離機メーカーに打診したが、医薬品用は扱ったことがないと断られてしまったのだという。人の体に使う製品をつくるだけに要求事項は多かったが、それでも同社は依頼を引き受けた。

「当社だって経験はありません。でも、お客さまが求めていることに耳を傾け、どんなことが必要なのかを教えてもらいながら、なんとか完成にこぎつけました」

この製薬会社とのやりとりの中でノウハウを蓄積していった同社は、50年に遠心分離機の専業メーカーへと舵(かじ)を切る。やがて、評判を聞きつけた他の製薬会社からも依頼が舞い込むようになり、国産遠心分離機のパイオニアとしての地歩を固めた。

断らない、値下げはしないが基本スタンス

一般的に、血液検査や尿検査などに用いる遠心分離機は小型なものが多く、大手メーカーなどが製造販売している。一方、同社がメインで扱っているのは、製薬会社が医薬品の製造に用いる大型のものだ。しかも、1台で複数の医薬品の分離に使用するので、洗いやすさを重視しているのが特徴だ。さらに、お客さまによって製品特性や使用法、工場レイアウトなどが異なる。そのためお客さまの要望に合わせた完全オーダーメードで、納品後もフィードバックを受けての改良や、製品が変わるたびにリニューアルも請け負う。したがってお客さまとは長い付き合いになるケースがほとんどだ。

「大手メーカーは面倒な仕事はやらないので、それをやるのが当社だと認識しています。ですから、基本的にどんな依頼も断りません。(祖父である)会長の口癖が『やってみなはれ』で、むしろ他社がやらないような難しい案件を進んで引き受けてきました」 例外として値段が折り合わないときは断るというが、そこには値段に応じてクオリティーを下げたくないというプライドがある。そうした姿勢から「技術の松本」と評価されるに至った。

「2年ほど前にふと技術って何だろうと思い、今までやってきたことを経営理念として文字化しました。一つ目は提案力、二つ目はあきらめない粘り強さ、三つ目はスピード感です。お客さまから『こんな機械ほしいねん』と言われたら、今までの経験からその言葉の奥に何を求めているのかを考えて提案し、使いにくいと言われたら満足してもらうまであきらめずに改良に取り組みます。そして万一、当社の機械に不具合が起きて、薬の供給が滞るようなことがないように、トラブルが起きたら深夜でもお正月でも駆け付けることをモットーにしています」

技術のマニュアル化と業務のIT化で効率アップ

同社製品は現在、医薬品をはじめ化学薬品、食品、自動車、電子材料、リサイクルなど幅広い分野で活用され、国内外に5000台を超える納入実績を誇る。医薬品の分野では国内シェア70%を占め、トップの座を揺るぎないものにしている。そんな同社が力を入れているのは、技術の伝承と業務の効率化だ。

職人は言葉で伝えることが得意ではなく、いまだに技術は「見て覚えろ」という考えを持つ者が少なくない。しかし、同社製品は一つひとつがオーダーメードなので、つくり方に統一基準がない。そのため完成品は同じでも、職人によって製造過程が異なる場合があり、若手は混乱しがちだった。そこで各工程における職人の技術を動画に撮り、ベストのやり方を模索しながらマニュアル化を進めている。

「かつては製品のオーバーホールができるようになるまでに10年はかかっていました。でも、技術や作業工程のマニュアル化によって、2年ほどで一人前に育てることを目指しています」

さらに、業務のIT化や営業の成功事例のデータベース化を進めるなどの効率化によって、作業時間が大幅に短縮されている。 「近年では、ロボットや人工知能(AI)を取り入れた活用について相談されることが増えてきました。医薬品ではトップシェアでも、それ以外ではまだ無名なので、幅広い分野の多様なニーズに応えられるように技術力向上に取り組んでいます。また、医薬品開発の最先端を行くヨーロッパに当社製品を広めるとともに、向こうの技術を日本にも紹介していきたい」と松本さんは自ら掲げた目標に向かってひた走っている。

会社データ

社名:株式会社松本機械製作所

所在地:大阪府堺市三宝町6-326

電話:072-229-3388

代表者:松本知華 代表取締役社長

従業員:57人

HP:http://www.mark3.co.jp/

※月刊石垣2020年1月号に掲載された記事です。

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