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テーマ別企業事例 日本一、世界一になるには理由がある! シェアNo.1企業のプライド

事例2 顧客の声を形にした「自動串刺機」で世界シェア9割を維持

コジマ技研工業(神奈川県相模原市)

コジマ技研工業は「自動串刺機」の開発や設計、製作、販売を一手に引き受ける専業メーカーだ。国内のみならず、世界でもシェアは9割を超える。その裏には、形、大きさ、固さなどが異なるどんな食材にも確実に串を刺し、なおかつ抜けないという品質へのこだわりと、顧客ニーズにとことん応える姿勢がある。

1時間に最大2000本の串刺しができる大量生産機。1990年の発売以来、改良を重ねて現在も現役のロングセラー商品

「串刺し機=使えない機械」のレッテルを外す

機械製造の町工場を営んでいたコジマ技研工業が、「自動串刺機」なる機械の開発に乗り出したのは創業前のことだ。同社会長の小嶋實さんが、焼き鳥店から「肉に串を刺す機械がほしい」と持ち掛けられたことが発端だ。實さんは本業の傍ら開発に乗り出し、2~3年の試行錯誤の末に串刺し機を完成させる。その完成度が高かったことから、1985年に法人化して専業メーカーとなり、どんな食材にも確実に刺せる製品づくりに邁進(まいしん)。今では国内外から広く注文が舞い込み、累計販売数は3000~4000台、世界シェアの9割を占めるに至った。

串刺し機というと単純な機械と思われがちだが、実は奥が深い。焼き鳥には種類があり、それぞれ形、大きさ、固さなどが異なる。それらの真ん中に確実に串を刺し、なおかつ食材が抜け落ちないようにしなければ、焼き具合や味に影響を及ぼす。

「初号機の開発では、お客さまの要望を聞き、職人の手刺しの技を観察して、機械づくりに反映させました。父が試作機で刺した串を実際に家に持ち帰って焼いてみて、出来栄えを確認することもしょっちゅう。そのころ私は中学生くらいでしたが、たまにその串刺しを食べておなかをこわすこともありましたね」と二代目で社長の小嶋道弘さんは笑いながら振り返る。

そうして完成した自動串刺機は依頼元の焼き鳥店にたいそう喜ばれた。これならほかでも使ってもらえるのではと、他の焼き鳥店や肉屋などに営業に回ると、すこぶる反応が悪かった。すでに串刺し機は市場に多数出回っており、競合他社が二十数社もあったのだ。しかし、既存品は品質が低かったため、業界では「串刺し機=使えない機械」というレッテルが貼られていた。

「当時はそんなことも知らなかったわけですが、だからこそ既存品をベースにせず、いろいろ模索して独自の方法で製品を開発したことが功を奏しました」

同社の機械を導入した店の口コミが徐々に広がり、製品を購入してくれるところが増えていった。一方では競合他社が次々撤退したため、同社は早々と串刺し機のトップシェアを獲得した。

顧客の声を聞いて個別にトレーを工夫

同社製品の強みは“何にでも刺せる”ことだ。串刺しには焼き鳥をはじめ、野菜、コンニャク、フランクフルト、うなぎなどさまざまな種類があり、串の長さや太さにもバリエーションがある。そうした違いにも対応できる機械をつくるために、同社では顧客の声をよく聞くことをモットーとしている。その姿勢の表れが、緑色のトレーだ。

「お客さまにしてみれば、どんなに食材の種類が多くても1台の機械で賄いたい。そのニーズに応えているのがトレーです。どれも同じに見えますが、何をどのように刺したいかに合わせて工夫を施してあるので、お客さまの数だけトレーがあるんです」

ちなみに扱いが難しいのは、意外にも柔らかい食材だそうだ。例えば、つくねは刺しやすいが、串から抜けやすい。コンニャクのようにツルツルしたものも同様だ。それらに確実に刺して、調理中に不具合が出ないようにするには、手間が掛かっても顧客ごとにつくるべきと同社は考えている。

「かつて最も難儀したのは、日本に流通していない食材の串刺し機を海外から注文されたときですね。手元に現物がないため、食材の特徴や、どんな串にどのように刺したいのかをビデオに撮って送ってもらい、どうにか完成させました」

毎年製品をブラッシュアップして他の追随を許さない

同社が国内外において圧倒的なシェアを獲得するに至ったのは、そうした地道な努力による顧客満足度の高さにある。顧客ニーズに対応するために、道弘さんが常に心掛けているのは、従業員一人一人に“自主的に考える癖”を付けさせることだ。

「どんなにお客さまの声に応えたつもりでも、本当に満足してもらえるのは8割、あとの2割は何かしら要望があります。従業員にはそれを聞いて来て、『自分ならどうするか』『どうすれば解決できるか』を考えろと言っています。そのためにも当社では営業から製造、メンテナンスまで、1社の製品を一人に担当させています」

集積された顧客の声は、翌年の製品づくりに生かしている。従来品を改良することもあれば、今までとは別の新しい製品をつくる場合もある。同社が他の追随を許さないのは、毎年製品をブラッシュアップしていることが大きい。それらのお披露目の場として国内外の展示会に積極的に出展しているが、近年ではウェブサイトを通じて海外からの注文も急増しており、現在売り上げの28%を占めているそうだ。

「現状で満足したらあとは落ちていくだけなので、常に新しいものを生み出していきたい。今考えているのは、食材をトレーに置く手間を減らすワンランク上の串刺し機です。それをいかにコストを抑えてつくるか、現在実験の日々です」

会社データ

社名:コジマ技研工業株式会社

所在地:神奈川県相模原市中央区中央5-3-14

電話:042-755-7300

代表者:小嶋道弘 代表取締役社長

従業員:12人

HP:http://www.kojimagiken.co.jp/

※月刊石垣2020年1月号に掲載された記事です。

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