100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 200年の歴史を持つ唯一無二の酒まんじゅうを伝統的な製法にこだわってつくり続ける

湯沢屋

栃木県日光市

店舗の横には、2004年に創業200周年を記念してオープンした和風喫茶スペース「湯沢屋 茶寮」がある

参拝客を相手に商売を始める

江戸幕府初代将軍・徳川家康がまつられている日光東照宮には、江戸時代後期ごろから多くの参拝客が訪れるようになっていた。東照宮に向かう道の途中にある湯沢屋は、文化元(1804)年の創業以来200年以上にわたり、この地で特製の酒まんじゅうを参拝客や観光客たちに販売している。

「髙村家は元禄以前からあり、もともとは山中湖周辺の出のようです。甲斐の武田家が滅び、甲州が徳川家に統治されたことが縁で、うちの先祖は東照宮のある日光に来て住み着き、湯沢屋と名乗って、参拝客を相手にお茶屋みたいなことを始めたのだと思います」と七代目の髙村英幸さんは言う。

湯沢屋では創業当時から酒まんじゅうをつくり続けている。酒まんじゅうは、こうじが発酵することで小麦の皮が柔らかく膨らむ工程が酒づくりの工程と似ていることから、その名が付いている。湯沢屋では、その伝統的な製法を変えることなく今に伝えている。

「日光にはうちより古いようかん屋さんがあるので、それとは違うものをということで酒まんじゅうをつくり始めたのでしょう。明治時代に入ってからつくり始めたようかんと酒まんじゅう、この二つだけでずっとやってきました。日光は東日本随一の歴史ある観光地で、明治政府も外国からの要人を接待する際に使うことが多く、早くから鉄道が敷かれて国際観光都市となっていました。日光では私が子どものころから、あちこちに英語表記の看板があったほどです。うちの店も、日光でなければ200年も続かなかったと思います」

本物のつくり方にこだわる

酒まんじゅうは日本各地にあるが、湯沢屋はその伝統的な製法にこだわりながらも、そこに店独自の手法を取り入れたものをつくっている。材料はもち米、小麦粉、こうじ、小豆、砂糖のみ。こうじづくりから始め、そのこうじと創業以来受け継いできた天然酵母でもち米を発酵させて甘酒をつくる。その甘酒の搾り汁で小麦粉を溶き、一昼夜発酵させた生地を自家製のあんで包み、最終発酵させてから蒸しあげてようやく出来上がる。仕込みから完成まで7日間も掛けているのだ。

「天然酵母はうちにしかないもので、よそではやっていない秘密の製法も取り入れています。うちの酒まんじゅうは皮がしっかりしていて風味が独特なので、栃木県内のお客さまからは、よその酒まんじゅうは食べられないと言っていただくほどです。唯一無二の存在といいますか、それもうちが続いてきた一因なのかなと思います」と英幸さんは自信を持って語る。酒まんじゅうに本当の酒は使わないのだが、実際には、簡単につくるために膨張剤を使って生地を膨らませ、香り付けに日本酒を使ったものを“酒まんじゅう”として売っている店が多いのだという。

「本物の酒まんじゅうは、1日で固くなってしまいます。蒸したり温めたりすればまた柔らかくなるのですが、そういうわけで支店をつくったり卸売りをしたりすることが難しく、商売を広げられないという面もあります」

もっと付加価値のある商品を

そう言う英幸さんも、41歳で店を継いだときは、販路を広げようと試行錯誤したこともあったという。「30代から店を任されていて、若いころは店をもうちょっと大きくしたいという野望があったのですが、商品の性質上、それが難しかった。でも、結果としてはそれで良かったと思っています。販路を広げて店を大きくしたり、多角化したりした店が、バブルが崩壊したらつぶれていく姿を見てきましたから。小さい店だからこそ、今でも商売を続けていくことができているのだと思います」

店を大きくしない代わりに、英幸さんは新たな商品を開発した。日光の三大特産品である湯波(※)、ようかん、しそ巻き唐辛子をコラボし、湯波の原料である豆乳とようかんを合わせた「豆乳水羊羹」、ようかんにしそ巻き唐辛子を入れた「日光唐辛子羊羹」を販売している。

「また、手を加えることをタブーとしていたメインの酒まんじゅうも、お土産として会社に買って帰りたいというお客さまからの声があり、時間がたっても固くなりにくいものを開発しました」

最近はお土産を買わない人が増え、酒まんじゅうの購入数も減っていることから、もっと付加価値のある商品、単価の高い商品を開発する必要があると英幸さんは考えている。「息子がいまほかの地域の和菓子屋で修業しているので、そこで技術を学び、新しい商品をつくってくれたらと期待しています」

本物の酒まんじゅうは固くなりやすいものの、酵母やこうじの力で日持ちはいいのだという。それをつくる湯沢屋も同様に、長持ちする商売を心掛けている。

※日光では「湯波」、京都では「湯葉」と表記される

プロフィール

社名:有限会社湯沢屋

所在地:栃木県日光市下鉢石町946

電話:0288-54-0038

HP:https://www.yuzawaya.jp/

代表者:髙村英幸 代表取締役

創業:文化元(1804)年

従業員:10人

※月刊石垣2019年1月号に掲載された記事です。

この記事をシェアする Twitter でツイート Facebook でシェア

次の記事

100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 ただ単に会社を長く続けていくのではなく常に革新をして、食と農業に貢献していく

株式会社サタケ

兵庫の灘、京都の伏見と並び、日本の三大酒処(どころ)の一つとして知られる広島県東広島市の西条に、精米機を中心とした食品加工機械と食品の製造...

前の記事

100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 創業130年大方針は ①核事業に集中 ②スピード ③顧客第一主義 ④現地現場主義

マリンフード株式会社

大阪府豊中市でチーズやマーガリン、ホットケーキなどを製造するマリンフードの始まりは、明治21(1888)年に東京牛込で創業したせっけん工場だっ...

関連記事

100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 多角化の時代から事業の幹を太くする時代へ コロナ禍の後はまた攻めの時期に入る 無料会員限定

株式会社いちまる

駿河湾に面し、古くから漁業のまちとして栄えてきた静岡県焼津市は、特にカツオとのつながりが強く、江戸時代半ばにはかつお節も製造されていた。...

100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 江戸時代に始めた新事業が今の主力事業に 商いの中で変化を続けて時代に合わせていく

太田商事株式会社

愛知県中部の刈谷市に本社を置き、建築資材・エネルギー・日用雑貨などの事業を展開する太田商事の歴史は、戦国時代までさかのぼる。織田信長の三...

100年経営に極意あり!長寿企業の秘密 漢方はこのまま何もしなければ先細りになる 気楽に親しめる新しい事業に踏み出す

株式会社ヘルシーライフ

数種類の生薬で構成され、崩れた体調のバランスを整えることで病気を治していく漢方薬は、中国では数千年の歴史があり、日本には5〜6世紀に伝来し...

月刊「石垣」

20221月号

特集1
老舗に学ぶ経営哲学 100年企業が守ってきた“わが家の商法”

特集2
新たな波が大きなチャンスになる!地域企業連携で新エネルギーに挑む

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

会議所ニュース

月3回発行される新聞で、日商や全国各地の商工会議所の政策提言や事業活動が満載です。

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

無料会員登録

簡単な登録で無料会員限定記事をすぐに読めるようになります。

無料会員登録をする