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2018年版中小企業白書・小規模企業白書(概要)  生産性向上の実現を M&A、IT導入が鍵

図1 企業規模別労働生産性の推移

政府はこのほど、2018年版中小企業白書・小規模企業白書を閣議決定した。白書ではアンケート調査結果に併せて、生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者の事例を昨年の倍以上となる113件紹介。中小企業・小規模事業者に対して生産性向上に向けたヒントを提供する内容となっている。特集では、その概要を紹介する。

「10のポイント」

1.中小企業の景況感は改善傾向にある一方、大企業との生産性格差は拡大

〇中小企業の経常利益は過去最高水準。景況感も改善傾向にあり、都市と地域間のばらつきも縮小。

〇他方、依然として大企業との生産性格差は拡大。中小企業の生産性向上が急務。(図1)

2.未来志向型の取引慣行に向けて、下請け取引は着実に改善

〇下請Gメンによる下請企業ヒアリングでは、全体の約25%(※)の企業で具体的な改善を確認。

※具体的な改善があった事例を集計した割合であり、残りの75%において不適切な取引が存在しているわけではない。

〇引き続き、未来志向型の取引慣行の実現に向けて、下請中小企業と親事業者の適正な取引を普及定着させ、賃上げできる環境の整備を図るための取り組みを推進。

3.IT導入などを行う上でも、業務プロセスの見直しは生産性向上の大前提

〇設備投資やIT導入などの生産性向上に向けた取り組みは、業務プロセスの見直しと併せて実施することで一層の効果が期待される。業務プロセスの見直しは生産性向上の大前提。(図2)

4.幅広い業種で多能工化・兼任化の取り組みが進展。生産性向上にも寄与

〇人手不足の状況下で、多くの業種で多能工化・兼任化の取り組みが進展しているが、卸売業・小売業、サービス業などの非製造業において製造業並みの積極的な取り組みが必要。(図3)

5.IT導入のきっかけとして重要になるのは、地元のITベンダーなど身近な相談相手

〇中小企業のITに関する相談相手は、地元のITメーカー・販売会社などが多く、こうした主体がIT導入を働き掛けていくことが重要。

6.業務領域や一企業の枠を超えて連携することでITの効果は飛躍的に高まる

〇IT導入の効果を高める上では、複数の業務領域間でデータ連携を図ることが重要。

〇さらに、企業間でデータ連携を行うことで一層の生産性向上が期待できる。(図4)

7.生産性向上のためには前向きな投資が重要。引き続き投資を促進する必要

〇中小企業の設備投資は、緩やかな増加傾向。

〇足元では設備老朽化などを背景とした維持・更新投資が中心だが、生産性向上につながる前向きな投資をより一層促進していく必要がある。(図5・6)

8.事業承継などを背景に、中小企業のM&Aは増加し、生産性向上に寄与。今後はマッチング強化が課題

〇事業承継などを背景に、中小企業のM&A件数は増加基調。買い手側の企業にとっても、シナジーを発揮し、生産性を高める契機となり得る。

〇M&Aの相手先を見つけたきっかけとしては、金融機関などの第三者からの紹介が多く、マッチング強化が今後の課題。(図7)

9.小規模事業者では経営者に業務が集中。IT導入などによる経営者の業務効率化が急務

〇人手不足を背景に、小規模事業者では経営者に業務が集中。業務の見直しやIT利活用などを進めることを通じて、間接業務の業務負担を軽減し、経営者の業務効率化を進めることが急務の課題。(左別項参照)

10.小規模事業者へ施策を浸透させる上では、支援機関の役割が重要

〇支援機関による伴走型支援や支援機関同士の連携によって、小規模事業者が必要とする施策をスムーズに届けることが可能に。(左別項参照)

業務効率化の事例

モバイルPOSレジなどを使い業務効率化し、売り上げ向上につながる取り組みを行う小規模事業者

【企業概要】

〇松尾農園(長崎県松浦市)

〇業歴67年の種苗店(従業員3人、個人事業者)。3代目の松尾氏が代替わりの際にカフェを開店。

【具体的取り組み】

〇経営を多角化したことで業務量が増加。商工会議所の勧めで、クラウド会計とモバイルPOSレジを導入。→インターネットバンキングとも連動、経理業務を効率化。

【効果】

〇効率化によって空いた時間を活用し、種苗のネットショップを開始。SNSによるPRが功を奏し、売り上げ向上。

【コスト】

〇クラウド会計は月額900円程度。

〇Airレジのためタブレット端末などの導入費用は合計で17万円(うち軽減税率対策補助金による補助額は10万円)。

支援機関の役割・事例

<事例1>出水商工会議所(鹿児島県出水市)

同所の支援の下、売上増を実現

〇同所は、持続化補助金を採択された事業者による事例発表会を3年連続で開催。地域の事業者が補助金を活用する動機付けになっている。

〇また、経産省の補助金のみならず厚労省の助成金なども幅広く案内している。

【企業概要】

〇有限会社パン工房麦穂(鹿児島県出水市)

〇従業員3人、資本金300万円のパン屋。

【具体的取り組み】

○売り上げ減少を商工会議所に相談。持続化補助金を活用した看板の入れ替えを提案され、大きく背の高い看板を設置。

〇認知度が高まり売り上げが年300万円増となった。看板設置費用は約24万円(うち、16万円の補助)。

<事例2>福岡県よろず支援拠点

テレビ電話シスムによって、遠方の事業者も専門性の高い相談員による支援を提供しているよろず支援拠点

〇飲食店経営者やTV制作会社ディレクターなど多様な専門性を持つ相談員を要するよろず支援拠点。

〇2017年11月から、スカイプなどのテレビ電話システムによる遠隔相談を導入。各地の商工会議所などに窓口を設置し、県内24カ所でテレビ電話相談が可能に。費用もタブレット端末などで約2万円弱と安価。

〇片道3時間かけて相談に来ていた事業者や、これまで利用をちゅうちょしていた事業者が、専門性の高い相談員から気軽に支援を受けられるようになった。

〇「テレビ電話相談は、お互いの表情が分かるため、電話相談に比べてコミュニケーションの質は劇的に向上する」とチーフコーディネーターの佐野氏は語る。

〇今後は、博多から遠方の市町村全てにテレビ電話相談窓口を設置していく考えだ。