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攻めのICT投資で生産性上昇 2018年版情報通信白書(概要) 新サービスで持続的成長

【図1】 日米のICT投資額(名目)推移 日米のICT資本ストック(名目)推移

総務省はこのほど、「2018年情報通信に関する現状報告」(2018年版情報通信白書)を公表した。白書の特集テーマは「人口減少時代のICTによる持続的成長」。新たな価値を実現するICT(情報通信技術)を利活用した需要喚起や生産性向上、社会・労働参加促進による人口減少時代における持続的成長について展望している。特集では白書の概要を説明する。

第1部 特集:人口減少時代のICTによる持続的成長

人・モノ・組織・地域などあらゆるものを「つなげる」ICTを利活用して、需要喚起、生産性向上、社会・労働参加を促進することで、人口減少時代における持続的成長が図られる。

第1章 世界と日本のICT

世界と日本のICT市場の動向

〇IoTデバイスは稼働数が多い分野は「通信」であるが、成長率は「産業用途」「自動車」「医療」が高いと予測される。

〇クラウドサービス市場規模は、拡大を続け、2020年には17年の約1・9倍に達すると予測される。

〇一方、スマートフォン市場のように、普及を遂げたことで、安定成長に移行している市場もある。

日米のICT投資の現状

〇米国との比較では、わが国はICT投資額が少なく、従って、ICT資本ストックも横ばいの状況が続く。(図1)

〇ICTが影響を与え得る全要素生産性(※)とICT資本ストックは、わが国のGDP成長(付加価値増加)に一定程度寄与しているが、10年までは米国比で低水準。

(※)全要素生産性(TFP):資本と労働以外で生産の増加に寄与するもの。具体的には、ICTが影響を与え得る技術進歩、効率化など

〇わが国成長率の内訳を情報通信産業とその他産業とで比較すると、情報通信産業以外でのTFPの押し上げが弱い。

第2章 ICTによる新たなエコノミー形成

ICTがもたらす「つながり」による新たなエコノミーの形成

〇AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)による変革により、市場においても企業や業種相互の関係に変化が起きている。

〇ICTを活用したソリューションを提供することで新しい価値や仕組みを創造する「X-Tech」が進展。デジタル化が進む金融(FinTech)を始め、さまざまな分野に広がりつつある。(図2)

〇X-Techの進展により、各業種やバリューチェーン(付加価値を生む各工程)を超えた連携・統合が進むことで、業界構造の変化や異業種間の相互参入が進み、業種を超えて新たな市場が形成され始めている。

〇例えば、FinTech企業が金融機関における顧客情報と連携して資産管理や自動的に貯蓄するといったサービスを提供するなど、従来の業界にとどまらない分野横断的なサービスが進展している。

ICTがもたらすグローバル需要の取り込み

〇人口減少に伴う国内需要縮小を補うためには、成長が続く新興国を中心にした、グローバル需要の取り込みが重要。

〇ICT企業アンケート調査の結果、今後多用したい海外進出手段は直接投資(同業種)。

〇さらに資本を取り込むというアプローチとして、M&A(企業合併・買収)がある。ICT企業の海外M&A実績(16年)は367億ドル(約4兆円)。(図3)

〇近年増加しているインバウンドの促進については、ソフトパワー強化(コンテンツの海外展開)、受け入れ環境整備(Wi-Fi整備、多言語翻訳対応など)などでICTは貢献できる。

第3章 ICTによる生産性向上と組織改革

企業のAI・IoT導入状況と利活用の課題

〇各国企業のAI・IoT導入状況と予定を「プロセス」(生産工程・配送方法など)と「プロダクト」(製品・サービスの市場への導入)から見ると、日本企業のAI・IoT導入率は欧米企業と大きな差はないが、20年以降は他国より遅れる可能性がある。

〇AI・IoT利活用に当たっての課題として、日本企業は、欧米企業と比較して情報通信システムに関する課題について回答率が低いが、事業や組織に関する課題について回答率が高い。

〇これらから、AI・IoT利活用がもたらす効果や、その効果を最大化するための方策について、日本企業は具体的に見通せていない可能性があることが分かる。

わが国の生産性とICT利活用の効果

〇OECD加盟国の時間当たり労働生産性(16年)では、日本は平均を下回り、中位(35カ国中21位)にある。

〇労働生産性向上には、①労働投入量の効率化を図る(プロセス)、②付加価値額を増やす(プロダクト)、ことが考えられ、いずれにもICTを利活用できる。

〇現状では、企業がICTにより解決した経営課題は、①(プロセス)に関係するものが多い。(図4)

〇労働生産性上昇効果は、既存製品・サービスの高付加価値化を中心とする「攻めのICT投資」による効果がより大きい。

ICTのポテンシャルを引き出す組織改革

〇「攻めのICT投資」を実現するために、ICTのポテンシャルを引き出すための組織改革も不可欠。

〇そのためには、事業活動におけるICTの導入・利活用を主導するCIO(最高情報責任者)・CDO(最高デジタル責任者)の設置を核とした組織整備を進める必要がある。

〇ただし、CIO・CDOの設置率は、米国、英国、ドイツと比較すると日本は低い。

〇CIO・CDOを設置(検討)している企業では、ICTの導入がより進んでおり、また、ICTを利用した雇用や労働力向上に係る取り組みにより積極的に取り組んでいる傾向にある。(図5)

第4章 ICTによるインクルージョン促進

ICTによる「つながり」の現状

〇通信利用動向調査によると、わが国のインターネット利用率は、08年、17年調査共に10代後半から40代にかけて90%以上であったが、17年調査では60代以上の利用率も増加している。

〇インターネットに接続する端末は、40代までの世代はスマートフォンが主であるが、60代以上ではパソコンが主で、モバイル端末も携帯電話の利用率が高くなるなど傾向が異なる。

〇電子メール利用率と異なり、ソーシャルメディア利用率は20代74%、60代31%などと年代により大きく異なる。 多様な人々の社会参加を促すICTによるコミュニケーション

〇コミュニティーへの参加に関する調査では、08年度調査と比較して、コミュニティーに参加しない人が減少し、オンラインコミュニティーのみに参加する人が増加している。

〇ただし、オフラインとオンラインコミュニティー共に参加する者が、他人とつながる力が強い傾向は変化ない。

〇地域で人助けをしたい人のうち、40%以上がソーシャルメディアを利用した共助の仕組みへ参加意向を持っている。ソーシャルメディアなどのICT利活用により住民の課題や支援意向などを可視化し「つなげる」ことで、共助を支援する取り組み例もある。

ICTによる多様な人材の労働参加

〇17年の企業のテレワーク普及率は13・9%。会社のルール未整備などが課題であるが、従業員にはワーク・ライフ・バランス向上など、企業には労働生産性向上などのメリットがある(向上効果があった企業:82・1%)。(図6)

〇クラウドソーシングとは、企業などが発注した業務を個人・グループが受注する仕組みであり、ICTを用いることで、女性など多様な人材の労働参加や地方での仕事の創出にも役立つ。クラウドソーシングの登録者数(株式会社クラウドワークス会員数)は増加傾向にある。

第2部 基本データと政策動向

第5章 ICT分野の基本データ(省略)

第6章 ICT政策の動向(省略)