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パラリンピックのチカラ File 5 広い目配りと気配りで仲間に力を与える、最後のとりで

佐藤 大介 (さとう・だいすけ)

1984年6月17日神奈川県出身。保育士。所属クラブは「たまハッサーズ」

シュートコースやタイミングを予想しにくい目隠しした選手に対峙する佐藤大介選手 撮影:吉村もと

パラリンピック競技の中には健常者も選手となり、メダルを目指せる競技もある。視覚障害者が目隠ししてプレーし、「ブラインドサッカー」とも呼ばれる5人制サッカーでは、ゴールキーパー(GK)は目が見える人(晴眼者または弱視者)が務め、ゴールを守るとともに、見えない選手の「目の代わり」として情報伝達役も担う。

「特異な守護神」に一意専心で取り組むのが佐藤大介だ。幼稚園からGK一筋のサッカー少年だったが、高校卒業を機に引退。教育実習中の2007年、テレビで偶然見た光景に心奪われた。「見えないのに、なんて生き生きとサッカーしてるんだ。GKなら一緒にできる。やってみたい!」

熱い思いでクラブチームの門をたたき、活躍が認められて、日本代表入りを果たして10年余り。保育士の仕事と両立させながら、「最後のとりで」として比類なき存在感を放つ。

とはいえ、最初は苦労の連続だった。GK歴は長かったが、ブラインドサッカーではシュートを止めるだけでなく、特に自陣周辺のピッチ状況を把握し、得た情報をチームで共有するための発信源を一身に背負う。ボールを見ながら、敵と味方の位置関係にも気を配る。瞬時に情報を処理し、伝えるべき情報だけを選び、端的な言葉を導き出す。自分の声掛け一つで選手のプレーは大きく変わる。強い信頼関係も欠かせない。

容易でないからこそ、やりがいも大きいが、「情報は僕が与えるけれど、そこから自ら考えて判断し、実行するのは選手。達成感は彼らに味わってほしい」。それが、佐藤の誇りだ。

この夏、日本代表はいよいよ、何度も挑んでは跳ね返されてきたパラリンピックの舞台に初めて立つ。「僕らのチームにスーパースターはいません。一人一人がチームのためにどれだけの力を発揮できるか。誰一人手を抜かず、みんなで守って、みんなで攻める。スタッフも含めた全員サッカーが日本の良さ」と胸を張る。

唯一の見える選手として、佐藤にはパラリンピックでの夢がある。「表彰台の上で喜ぶ仲間たちを、ちょっと離れたところから眺めたい」

その実現だけを目標に、佐藤は今日も、頭も体もフル回転させ、声を張り、体を張ってゴールを守る。

視覚に障害のある選手が、暗闇の中でボールを奪い合い、ゴールを狙う。

フットサルのルールを応用し、1チームは5人。GK以外の4選手は全盲で、アイマスクも着用し視覚を完全に遮断されてプレーする。頼りは転がると音が鳴るボールや仲間の声、聴覚や触覚など研ぎ澄まされた感性だけだ。

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/football-5-a-side/

観に行こう!Santen IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2020 in 品川

日程:2020年3月16日(月)〜21日(土)

会場:品川区立天王洲公園(東京都品川区) *有料(前売り券発売中)

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/

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