わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の違反事例のほか、公益財団法人全国中小企業振興機関協会がこれまでに実施したセミナーにおける質問や、日々寄せられる問い合わせの中から、特に参考になる事例をQ&A形式で解説します。今回は、下請法上、親事業者に課せられている禁止事項のうち、購入・利用強制の禁止についてご紹介します。
Q.自動車製品関連などの部品の製造・加工を下請事業者に依頼しています。下請事業者に注文をする際に、下請法の第3条に基づく書面に代え、インターネットのウェブサイトを利用した方法に変更したいと考えています。その際、下請事業者が、既に利用しているインターネットプロバイダーでも受発注が可能であるにもかかわらず、自社が指定するインターネットプロバイダーに変更し、契約をするように強制することは、下請法上、問題となりますか。
A.親事業者が下請事業者に対して、発注書面の交付に代えて電磁的記録の提供の方法によることに同意を求めること自体は、直ちに下請法上の問題となるものではありません。しかしながら、親事業者が下請事業者に対して、正当な理由がないのに、自己の指定するインターネットプロバイダー、システムサービス事業者などからの役務の提供を受けさせる場合は、購入・利用強制の禁止に違反するおそれがあります。
なお、質問の場合、下請事業者が既に利用しているインターネットプロバイダーでも受発注が可能であるため、親事業者が指定するインターネットプロバイダーとの契約を求めることに正当な理由は認められません。注意してください。
Q.ビルなどの清掃業務を下請事業者に委託しています。発注担当者を通じて、下請事業者が断り、必要としていない自社で販売する食料品などを下請事業者に購入させていました。下請法上、問題となりますか。
A.正当な理由がないのに、親事業者が指定した「物」または「役務」を下請事業者に対して強制して購入・利用させると、「購入・利用強制の禁止」の規定に違反します。質問のように、発注担当者などの下請取引に影響を及ぼすこととなる者が、下請事業者に自己の指定する物の購入・役務の利用を要請する行為は、当該購入・利用強制の規定に違反するおそれがありますので、十分に注意してください。
提供
公益財団法人 全国中小企業振興機関協会
(旧公益財団法人 全国中小企業取引振興協会)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営するなど、中小企業支援機関として各種事業を実施しています。
HP:http://www.zenkyo.or.jp
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