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コラム石垣 2019年12月21日号 中村恒夫

「従業員の超勤も減らしたし、育児休暇も充実させました」――働きやすい職場が企業を成長させると話す中堅企業の経営者は、自社の取り組みを自慢した。「ご自身の働き方や健康管理はどうですか」と聞き返すと、答えに詰まったようだった。人材確保のため「健康経営」を標ぼうする会社は増えたが、対象から外れているのが経営トップだ。社長が急に倒れたら会社の存亡にかかわるのに、その点には無頓着な経営者が少なくない。

▼経営者の健康管理に詳しいボディインベストメントの日下部淑美代表によると、社長が突然大きな病気になる場合「心疾患が多い」という。その背景には、食事の在り方に対する関心の薄さが存在する。経営本を読んでも食事への知識が少ない人が多い。忙しいからといって、レトルト食品やインスタント食品ばかりに頼っていては、健康に良い影響があるはずがない。食事の時間をきちんと確保しておくことが、結局は、健康の維持につながるのは、経営者にも通じる。

▼逆に、仮に病気で入院することになっても「次の手を考える時間」と受け止めるべきだと日下部さんは指摘する。「多少無理のきく人が経営者になる」と話す日下部さんは「病気から来るメッセージと向き合うべきだ」と言う。そこには、これまで通りの猛烈な働き方をしなくても会社が稼働している事実を直視したり、権限移譲に取り組んだりする必要性が込められているのかもしれない▼従業員の健康管理は企業の責務である。この当たり前のことがようやく産業界に浸透しつつある今、これからは、トップの健康管理も経営者自身の義務であると考え、まずは栄養バランスの取れた食事を心掛けるべきであろう。

(時事通信社常務取締役・中村恒夫)

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