経済産業省は5月29日、「第22回産業構造審議会総会」を都内で開催した。会合では、世界の構造変化とそれに対する日本の対応について意見交換を行った。会合に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、「日本も、わが国のビジョンを盛り込んだ『日本ファースト』を打ち出すべき。もちろんそれは世界に受け入れられるものにしないといけない」と強調した。
会合で経済産業省は今後の政策の方向性として、IT補助金や経営支援のプラットフォームの活用により、人手不足に対応したサービス業を中心とした中小・小規模事業者のデジタル化、IT化、プロセス改善、経営改善を通じた生産性向上を進めるとしている。また、中小企業の事業承継やM&Aの活用による集約化を推進すべく、中小企業の新陳代謝の活性化に向けた事業承継時などの個人保証撤廃の加速化や、中小企業政策のデジタル化を進め、蓄積されたデータをプラットフォームに、中小・小規模事業者や支援機関、金融機関が活用し、経営改善につなげる仕組みを構築することなどを示している。
三村会頭は、「日本はよくサービス業における生産性の低さが言われるが、製造業の生産性も他国と比べてとても劣後しており、ものづくりの生産性向上も必要」と指摘。現状を把握するために、業種ごとの生産性の実態や国際比較などのデータを公表するよう求めた。また、1人当たりGDPについても言及。「日本は世界27位と低い状況にある。とかく600兆円など、トータルのGDPに目が向かいがちで、1人当たりの平均的な国民の豊かさである1人当たりのGDPの劣後に気付いていない。国は1人当たりGDPの目標を設定する必要がある」と述べた。
一方で三村会頭は、日本が直面している課題の一つとして社会保障改革を挙げた。厚生労働省の試算では2040年の社会保障給付費が190兆円と、現在の1・6倍にもなることから、「社会保障費をどう抑制するか、一刻も早い国民的な議論が必要」と強調した。
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