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コラム石垣 2019年3月21日号 中山文麿

2月末、ベトナムのハノイでトランプ米大統領と金正恩北朝鮮国務委員長の首脳会談が行われた。結果は想定外の物別れに終わった。このことは、北朝鮮の核兵器や中距離ミサイルの脅威にさらされているわが国にとっては良かった。

▼両者は昨年6月にシンガポールで非核化などの総論で合意した。しかし、各論になると事務局によって精緻な事前準備が必要となる。今回それがなされていなかっただけに、交渉は失敗するべくして失敗した。

▼昨年までのトランプ氏の交渉戦略は核兵器とミサイルを廃棄した後に北朝鮮に見返りを与える、いわゆる「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」であった。ところが彼は最近ツイッターでこの大方針のハードルを引き下げていただけに交渉の行方が懸念されていた。

▼一方、北朝鮮は核やミサイルを廃棄する都度、米国に見返りを要求する、いわゆる「サラミ戦略」を取っている。従って、彼我の交渉方針には天と地の違いがあった。

▼トランプ大統領は、今後、北朝鮮と仕切り直しをしたい意向のようであるが、今度は全ての核弾頭や核施設のリストアップ、非核化の定義とロードマップの明確化や検証方法の導入などを事前に実務家レベルでしっかり確認してもらいたい。

▼ただ、北朝鮮の核兵器は多大な資金と時間を投入して開発されたもので、祖父の金日成国家主席以来の悲願の賜物である。そして、北朝鮮は国内総生産(GDP)が400億ドル程度で、米国の20兆ドルの500分の1の小国に過ぎない。このような小国が超大国米国と対等に外交交渉を行えるのもひとえにこの核兵器のおかげだ。北朝鮮は絶対に核を手放せないはずで、これから核と制裁の我慢比べが始まる。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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