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生き残りへ 今こそチャレンジ 国の支援策を活用して新事業展開に挑戦しよう

(図1)新事業展開実施有無別の業績見通し

特別寄稿

太田敬治氏 株式会社エイチ・エーエル取締役副代表

政府はこのほど、平成26年度補正予算案と平成27年度予算案を閣議決定した。中小企業庁では、予算案の内容について、担当者が直接、分かりやすく説明した動画を作成。同庁のホームページなどで公開し各種支援策の活用を呼び掛けている。特集では、各地商工会議所の会員事業者向けに国の平成27年度予算事業である「創業スクール」、平成26年度補正予算事業である「創業・第二創業促進補助金」「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新事業)」の活用に向け、これまで、各地商工会議所と連携し、数々の支援実績を挙げている太田敬治氏(株式会社エイチ・エーエル取締役副代表)の特別寄稿を紹介する。

執筆者プロフィール

株式会社エイチ・エーエル 取締役副代表

1968(昭和43)年、長崎県島原市出身。大手石油元売にて物流業務、システム開発業務を経験し、2002(平成12)年、株式会社エイチ・エーエルの設立に参画。現在、補助金や経営革新などの施策を活用しながら、中小企業の経営コンサルティングを行っている。

成長企業に共通の傾向

厳しい時代こそ「新事業展開」

既存事業の枠を超える

昨今の円安による仕入価格の変動や、少子高齢化・人口減少などによる需要の減少など、企業を取り巻く経営環境は大きく変化しており、企業にとって、これまでと同じような経営を続けるだけで生き残っていくには大変厳しい時代になってきています。しかし、このような時代においてもさらなる成長を遂げる中小企業も多数存在します。

こうした企業の特徴は何か。それは、常に新しい商品・サービスを模索し、既存事業の枠を超え、新事業を展開し続けているという点にあります。まさに厳しい時代こそ「新事業展開」が重要となっているのです。

新事業展開を実施した企業の特徴

業績悪化企業にも活路

新事業展開を実施した企業と、実施・検討したことがない企業では、どちらの方が業績見通しがいいのでしょうか。「2013年版中小企業白書」によると、「新事業展開をした企業」の方が、「新事業展開を実施・検討したことがない企業」よりも、売上高や経常利益、常用雇用者ともに「増加傾向」の見通しが高いという結果が出ています(図1)。

さらに、新事業展開の検討を始めたときの業績について見てみると、「業績が好転していた企業」と「悪化していた企業」がほぼ同じ比率(図2)。業績が悪化している中で、経営者や後継者などが新事業に活路を見いだして、大胆な新事業展開を行い、業績を改善させた企業もあることがうかがえます。今が厳しくても、順調でも、新事業展開は「生き残りのキーワード」であるといえます。

新事業展開の際の課題とは 

解決ツールの活用を

新事業展開を行うことに必要性を感じている経営者が多い一方で、取り組むことに躊躇したり、取り組み始めても軌道に乗っていなかったりする経営者も多いのが現状です。(図3)は、下請比率の高い企業と低い企業に分けて、新事業展開に際して直面した課題を整理したものです。これによると、下請比率の高低にかかわらず、販売先の開拓・確保に加え、新事業を担う人材や新事業経営に関する知識・ノウハウ、さらには自己資金不足などを課題として捉えている中小企業が多いことがうかがえます。

しかし、中小企業を取り巻く環境は厳しく、人的にも資金的も多くの制約がある中で、新事業展開の人材を新規に雇用したり、知識・ノウハウを自社で補うのは難しいのが現状です。そこで今回は、新事業展開を考えていらっしゃる中小企業の皆さまに、国の支援策である、「創業スクール」や「創業・第二創業補助金」といった各種補助金についてご紹介します。どれも経営ノウハウや資金といった新事業展開時の課題を解決できる有効なツールですので、積極的に活用されることをお勧めいたします。

中小施策を上手に使う

国の支援策その1 創業スクール「第二創業・再チャレンジコース」

必要なノウハウを習得

創業スクールとは、文字通り「創業するためのノウハウなどを学ぶスクール」のことです。これから創業する方を対象にした「ベーシックコース」「女性起業家コース」のほかに、既に事業を行っている方向けの「第二創業・再チャレンジコース」があります。

「第二創業・再チャレンジコース」は、第二創業をする予定の会社の経営資源や強み、過去の失敗要因などを分析する機会を提供するとともに、第二創業時の課題となりうる、マーケティングや資金調達などの具体的手法など、必要な知識の習得をサポートしています。まさに、新事業展開において打ってつけのコースといえます。なお、創業スクールの実施主体は地域によって異なりますが、主に商工会議所などの支援機関にて開催されています。

*平成27年度予算事業である「地域創業促進支援委託事業(創業スクール)」については、現時点では受講者募集時期は未定となっています。

創業スクール「第二創業・再チャレンジコース」の活用事例

幹部育成という側面も

弊社が支援した事例をご紹介します。ある地方都市の洋菓子店では、社長とその息子が2人でスクールに参加し、社長が今後の新商品の企画を考え、息子が販売計画、数値計画を考えていきました。そうした取り組みにより、国の経営革新計画の認定を取得するなど、地域の優良店として認知度と顧客満足度を高めていっています。また、ある不動産売買・仲介の企業では、社長の後継者である息子をはじめ、経営幹部数名がスクールに参加し、自社の新事業計画を考えることで、後継者を中心とした組織づくりにつながりました。このように、新事業展開のきっかけとしてだけでなく、後継者や経営幹部育成という面からも、創業スクールは重要な「学びの場」となっています。

国の支援策その2 創業・第二創業促進補助金

資金調達の課題を解決

「資金」という課題を解決する策の一つとして、国の補助金を活用するという手があります。まず、創業・第二創業促進補助金をご紹介します。

①については、平成24年度補正予算から続く補助金で、新規の創業がメーンとなりますが、既存事業者が「新設会社」をつくる際も対象となります。

②については、平成26年度補正予算から新規に加わった内容で、既存事業者向けとなります。例えば、食品卸売や食品加工業の事業承継者が、それらを廃業して飲食店を展開する場合などが該当します。

国の支援策その3 ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新事業)の活用事例

販路拡大にも有用

次に、ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新事業)をご紹介します。

弊社が支援した事例では、メーカーが生産した服の最終出荷前検品を行っているサービス業が、テレビ通販業者などに販路を広げ、返品物の修理・再生利用を行うという新事業を展開するケースにおいて、検針機や洗濯機を購入した際にこの補助金を活用しました。また、鉄骨工事業が、鉄骨工事の受注の幅を拡大するために、溶接ロボットを購入したというケースもあります。

補助金を受ける際の留意点

将来の姿を見つめ直す

補助金には採択審査があります。前回(平成25年度補正)の創業・第二創業促進補助金の採択率は約30%、ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス革新事業)の採択率は約40%と、少々厳しい採択率となりました。しかし、補助金申請の際に事業計画書を作成することで、自社の経営状況を見つめ直すとともに、将来のありたい姿を思い描くきっかけとなり、前向きになることができたという声も数多く聞かれました。ぜひ、チャレンジしていただきたいと思います。

最後に~未来に向けて~

常に挑戦する企業へ

このほかにも、中小企業の新事業展開を支援する支援策は数多くあります。ただし「業績が悪いことに愚痴を言い、何もしない企業」には何の支援もありません。「業績が悪くても、絶えず現状と将来を見て、チャレンジする企業」に対して、支援があるのです。各種支援策については最寄りの商工会議所にお問い合わせいただくか、国が運営する「ミラサポ(※)」という支援施策の情報提供サイトなどが参考となります。ぜひ、自ら情報を調べ、自社に足りない部分を補い、時には周りの人の協力を得ながら事業を進めていってください。貴社のさらなる発展を祈念しています。

(※)ミラサポ 未来の企業応援サイト https://www.mirasapo.jp/

公的機関の支援施策(補助金・助成金など)の情報を提供するサイトです。

創業・第二創業促進補助金

①新たな需要を創造する新商品・サービスを提供する創業者に対して、店舗借入費や設備費などの創業に要する費用の一部を支援します(補助上限200万円、補助率⅔)

②事業承継を契機に既存事業を廃業し、新分野に挑戦するなど第二創業者に対して、人件費や設備費など(廃業登記や法手続き費用、在庫処分費など廃業コストを含む)に要する費用の一部を支援します(補助上限1,000万円、補助率⅔)

出典:「平成26年度経済産業省予算案関連事業のPR資料」(経済産業省)

*平成26年度補正予算事業である「創業・第二創業促進補助金」については、今年度中に公募が行われる見込みです。

ものづくり補助金

新しい商品・サービスの開発や業務プロセスの改善、新しい販売方法の導入など、中小企業・小規模事業者が取り組む事業革新の費用の⅔を補助します。今回は、共同体で行う設備投資なども支援対象に追加します。

補助対象:

①新しいサービス、新商品・試作品の開発

②複数者が共同で取り組む設備投資など

補助上限額:①1,000万円、②共同体で5,000万円(500万円/社)

※設備投資をせずにサービス開発することもできます(上限700万円)

出典:「平成26年度補正予算案 中小企業・小規模事業者対策のポイント」(中小企業庁)

*平成26年度補正予算案である「ものづくり・商業・サービス革新事業」については、今年度中に公募が行われる見込みです。