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「下町育ちの再建王」の経営指南 創業者のすごみ

シカゴにPORTILO'Sというブランドのホットドックの店があります。15年ほど前、ロサンゼルスに1号店がオープンしたというので、視察の際に食べに行きました。イタリアンビーフというメニューで、フィレ肉スライスにたっぷりのタレを絡ませたものをパンにはさんであり、ものすごくおいしいホットドックでした。

店長と話をしたところ、オーナーは日本好きなのに日本にはまだ店が無い、というようなことを言っていたので私のセミナーで、その話をしました。すると私の親しい若い社長が是非行ってみたいと言い始め、行きがかり上、私もシカゴまで同行したことがあります。PORTILO'S本社の会長室には日本の美術品が飾ってあり、それだけで日本びいきだとわかりました。会長といろいろ話をした結果、1年半シカゴで修業して自分がオーケーを出せば、日本でやればいい。もちろん名前も使っていいしフランチャイズ料もいらないというスゴイ条件を出してくれました。

彼は熱くなってもうすっかりその気になり、シカゴ中のホットドックを食べ歩いて帰ってきました。彼は社長でしたが、父親である会長が全権を持って手広く仕事をしていたので、会長にやりたいことを報告したそうです。会長は、「……で、誰が1年半行くんだ」と尋ねたので「〇〇部の○○君に行ってもらおうと思っています」と答えたところ、「バカ野郎! お前が熱くなっていることを、熱を持ってない若いやつに行かせて命がけでやれるわけがない。やりたいならお前が今の仕事を辞めて修業して、1号店の店長をやってそれを成功させてから。2号店、3号店を部下にやらせる。それ以外はダメだ!」と、怒鳴られたそうです。

全ての事業は、当事者意識を持った熱意のある者がやらないと、うまくいくわけがない、と息子を叱ったわけです。つい最近、ほとんど同じ話を耳にしました。

地方に本拠地を構える、とあるパチンコチェーン店の社長が、東京進出を検討し、グループの会長に「○○君に東京に行ってもらって、私が月に1週間くらい行って管理しようと思っています」と報告しました。すると、会長は、「地方から東京に出るということは、大変なことだ。やる気ならお前が3年間東京に住み込んで成功させてから帰ってこい」と言ったといいます。

何かを始めるなら始めたいと思った当事者がその熱い気持ちを持って命がけで事に当たる。これが鉄則です。功成り名遂げ、会長職となって会社を見守っている創業者には、命がけで事をなしてきたすごみがあります。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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