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「下町育ちの再建王」の経営指南 思いやりある事業承継

私には4通りの文字があります。一つ目の文字は巻紙に書く筆文字。二つ目の文字は仕事上の原稿などを書く速記的な文字で、初めて見た方には読めないかもしれません。三つ目は手書きチラシの原稿の文字で、一定のスペースに何文字入れるかに気を配ります。四つ目は、見本通りに書く文字で、小さいときから不思議なほど手本そっくりに書くことができます。

人さまに何かを伝えるとき、シチュエーションごとに文字を使い分けるわけですが、クレームに対する詫び状などは、特に真剣な気持ちで書きます。それは、受け取った人に書いているときの私の気持ちがそのまま伝わると思っているからです。よく、達筆過ぎて読めない手紙やハガキを下さる方がいらっしゃいますが、私は、本当に何かを伝えたいと思えば、読めない程のくずし字を書くことにはならないと思うのです。丁寧で分かりやすい文字と素直な文章、これが大前提ではないでしょうか。

なぜ文字の話から始めたかといいますと、文字は相手に意思や情報を伝える際、思いやりを表すことのできる数少ないツールだと思っているからです。

文字と同様に、公衆トイレや新幹線のシートなども、自分が使用した後、人が引き続き使うものをどう整えるか、これも思いやりが表れる瞬間です。故・舩井幸雄氏がチェックアウトした後のホテルの部屋は、到着したときとほとんど同じ状態で、最初にみたときは驚きました。「次にそれを目にする見知らぬ人が気分を害さないように、すべてきれいに片付けて、元に戻さないといけない」というのが氏の教えでした。

今、私たちが暮らす地球の環境にも同じことが言えます。地球を汚さず上手に暮らして、次の世代が安心できる地球にしておくことが、今のわれわれの務めといえるでしょう。

さて、受け取る側のことを考えなければいけないのは、事業承継についても同じです。経営者はいずれ、誰を後継者にするかという問題にぶつかります。特にオーナー経営者は、子どもに継がせるのか、他人を起用するのかという大きな決断や、譲り方が重要になります。例えば、トップのカリスマ性で拡大してきた会社だとしたら、後継者が同じ路線でやっていくのは、なかなか困難です。承継を計画する数年前から企業スタイルを変えていくなど、戦略、戦術、戦闘のあり方と権限の委譲の仕方を熟慮する必要があるわけです。

残念ですが、人間は年を取る生き物です。企業の存続を望むのであれば、自分が年を取ることも含めて計画的で思いやりある事業承継を考えたいものです。あなたの周囲(の企業)ではどうでしょうか、考察してみてください。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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