職場で何かことが起きたとき、皆さんはどのような物差しで判断していますか。判断の物差しを明確にすることは、スタッフの自信を生み出す大きな力になります。判断基準としてまず大事なことは、これを自分たちの仕事としてやるべきかどうか。会社の理念や業務内容に照らし合わせることです。
次に、優先順位は正しいかどうか。物事には、お客さまからのクレーム対応、締め切り、病気や事故などのように緊急で重要なこと。突然の訪問、電話、会議、冠婚葬祭など、緊急だけどさして重要ではないこと。人間関係づくり、健康づくり、リーダーシップの構築、品質改善などのように、ゆっくりでもいいから重要なこと。そして、ゆっくりでよくて重要でないこと、の4種類があります。
タレントを引退した大橋巨泉氏は「60過ぎたら義理は欠け」と言っています。地域に密着した仕事をしていると、友人の子どもの七五三の祝いにまで招待を受けてしまいます。私は船井総研の社長になってからは、本当に行かないといけない葬儀だけに出席して、あとは総務部長に頼みました。それと同時に社員の結婚式は常務以上の出席は一人にする、というルールをつくり、社内の義理付き合いを整理整頓したのです。
さて、判断の基準の三つ目は、自分たちの都合や利益で判断せず、お客さまの立場で物事を考えているかということ。お客さま優先を教える事例としては、リッツ・カールトンホテルの〝クレド〟(経営理念)が有名です。
そして最後の判断基準は、取引先のことを考えているかということです。1962年にディスカウントショップを創業した私の親父は、「仕入先も霞食って生きているんじゃないから、安く仕入れりゃあよいというもんじゃない」と口癖のように言っていました。
一方、ある大手ディスカウント店では、苦しい会社の足元を見て、首吊りの足を引っ張っても値切るというやり方で、仕入れ値を下げていたのでした。取引先の米びつまで考える親父を頼って、苦しい会社が商品を売りに来るのですが、お客さまに「これを買って良かった、儲かった」と思っていただくのが仕事、という親父の使命感があるので、「きちんと利益を取りなさい。その代わり商売になる値段じゃないと仕入れられないよ」とはっきり言っていました。しかし基本は、お互い食べていかないといけない、という下町の助け合い精神があったわけです。
お客さま、取引先、そして自社。それぞれへの判断基準をスタッフに教えることで、自信を持ってイキイキと働ける社内環境を育んでください。社員が成長することこそ、組織の質を高める唯一の方法なのです。
お問い合せ先
社名:株式会社 風土
TEL:03-5423-2323
担当:髙橋
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