東日本大震災から4年が経ちました。一歩ずつではありますが、復興は確実に新たなステージへと移りつつあります。商工会議所の皆さまにはさまざまな御支援を進めていただき、改めて感謝を申し上げます。
一度失った取引ルートを取り戻すことは容易なことではありません。春の回復、開拓へ向けた初段階は、この課題を解決する突破口となるでしょう。まだ生産設備を整えることが難しい方々に、その要望を踏まえて全国の遊休設備を提供する事業が、被災地の事業者の皆さんがもう一度立ち上がる大きな助けになっています。離れてしまった観光客を内外から呼び込む復興イベント『東北六魂祭』も今年で5回目を迎えます。このような取り組みは地域の新たな絆をつくり、被災地を再び活気あふれる街へとつくり替えます。こうしたきめ細やかな支援活動は、地域に深く根ざした商工会議所の皆さまだからこそ可能な取組です。これまでの取り組みに感謝申し上げますとともに、引き続き、強力なご支援をお願いしたいと思います。
安倍内閣では、全閣僚が復興大臣という意識を共有し、引き続き被災地の方々の心に寄り添いながら、被災地の生業の復興、心の復興に向けて復興支援を全力で進めてまいります。日本全体一丸となって、必ずや被災地の復興を成し遂げてまいりましょう。
『日本を取り戻す。』こう申しあげて2年余り、三本の矢の経済政策は確実に成果を挙げつつあります。有効求人倍率は22年ぶりの高水準となっております。安倍政権発足以降、中小企業の業況DIは14ポイント、資金繰りDIは7ポイント改善しました。昨年の倒産件数は政権交代以前に比べ2割減少し、24年ぶりに年間1万件を下回りました。
しかしながら、まだ全国津々浦々の中小・小規模事業者の皆さままで景気回復の波が届いていないのは十分承知しております。『安倍さん、原材料やエネルギーのコストが上がって、価格に転嫁できないよ』という切実な声をよく耳にします。こうした声に応えるため、昨年末から原材料・エネルギーコスト高への対策パッケージを講じてきています。約20万社の親事業者に対して、原材料価格の上昇分を適正に取引価格に転嫁するよう要請し、今月中をめどに業種別の下請けガイドラインを改定します。今月末までに500社の大企業に対し、集中的な立入検査を行います。全国の商工会議所の皆さまにも、事業者が抱える不安を少しでも和らげるよう、コスト増加の相談を受けていただいております。
資金面での支援にも万全を期します。公的金融機関への要請の結果、この4か月間で、約20万社の返済が猶予されました。資金繰りの困難を来たす事業者や、省エネ投資を促進する事業者向けの新たな低利融資も開始しています。
昨年末の総選挙直後に開催し、三村会頭にもご参加いただいた政労使会議では、下請け企業の価格転嫁や支援・協力について合意しました。これを受けて、取引条件の改善の動きが出始めています。例えば、足元ではトヨタ自動車が転嫁提言の成果が取引先に帰属されるよう取引先への値下げ要請を行わず、系列企業の一部もこれに追従するといった動きもみられます。政府としても、近々政労使を開催し、こうした動きをしっかりフォローアップしてまいります。
好循環の拡大のためには、中小企業・小規模事業者が元気になることが不可欠であります。民主党政権時代に仕分けで廃止されたものづくり補助金を安倍政権で復活させました。サービス残業も対象に加えてパワーアップし、これまでに約2万5千社を支援してまいりました。さらに、2月初めに成立した補正予算に約1万社を支援する予定であります。引き続き、革新的で高付加価値を実現する中小・小規模事業者の皆さまを、企業を応援してまいります。
景気の好循環実現の鍵を握るのは、なんといっても賃上げです。昨年は約3分の2の中小・小規模事業者の方々に賃上げを行っていただきました。昨日の春闘の回答を見ると、今年は昨年以上の良いスタートとなっています。今後、景気回復の風が全国津々浦々に届くかどうかは、中小・小規模事業者の皆さまが思い切って賃上げに踏み込んでいただけるかどうかにかかっています。今なんとなくこの話をいたしますと、難しい顔をしておられる方々が散見されますが、皆さん、賃上げの環境は整ってきています。全国の商工会議所の皆さまにも経済の好循環拡大へ向けて積極的な賃上げを是非、お願いをしたいと思います。
一度失敗すると全てを失う個人保証偏重の慣行を断ち切り、再チャレンジしやすい環境を整えます。昨年2月には、個人と会社の資産を区分してしっかり管理していれば、個人保証がなくても融資が受けられるように、新たなガイドラインを作りました。日本政策金融公庫と商工中金だけで、1年間で5万件近くも個人保証を外した融資を実行しております。
知恵は正に現場にあります。地方こそ成長の主役です。しかしながら、地方は今、人口急減、超高齢化という待ったなしの課題に直面しています。活力ある日本社会を維持するため、あらゆる施策を総動員して、集中的に、切れ目なく、対策を講じていかなければなりません。その上で最も大事なことは、地方が自ら考え行動し、そして変革を起こしていくことであります。
熱意ある地方の創意工夫を全力で応援する、それこそが安倍内閣の地方創生です。これまでの施策の検証を踏まえ、国の示す枠組みに一律に当てはめることはせず、縦割りも排除してワンステップで推進します。今回の経済対策で創設したプレミアム付き商品券やふるさと名物商品券・旅行券は、地域の実情に合わせて各自治体が自由に事業設計を行うことを可能にしています。各自治体が創意工夫を凝らすことで最大限の効果を得ることができると考えています。今後、地方は自由な発想に基づき、地方版総合戦略を策定することになります。自分たちの地域を活性化するオンリーワンの取り組みを提案していただき、いただいた提案を国も全力で後押しする。地方と国、そうした一体での地方創生を進めてまいります。こうした取り組みが実効性あるものとなるためには、地域社会・地域経済に根差した商工会議所の役割は極めて重要です。三村会頭の強いリーダーシップの下、各地方が競い合い、皆さまのお力で地方創生、そして日本経済再生へ向けた動きを加速していただきたいと思います。
最後に、日本商工会議所ならびに全国の各商工会議所のさらなる発展と、お集まりいただきました皆さまのますますの御健勝、そして中小・小規模事業者で働いている方々の賃金がどんどん上がっていくことを祈念いたしまして、私のごあいさつとさせていただきたいと思います。
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