日本商工会議所の三村明夫会頭は2日、首相官邸で開催された政府・経済界・労働組合の代表者らによる「経済の好循環実現に向けた政労使会議」に出席。会議では取引価格の適正化に関する取り組みなどについて合意した。三村会頭は、「適正な取引価格の形成に向けた動きを一層広げることが打ち出された」と今回の合意について評価。安倍晋三首相は経済界に対し、「中小・小規模事業者には、好循環拡大に向けた賃上げについて、最大限の努力を図っていただきたい」と要請した。(こちらを参照)
政労使会議は、経済の好循環の実現に向けて、政労使が議論し、包括的な課題解決のための共通認識を得ることを目的に平成25年から開催されているもの。
会議では、景気の好循環を全国の中小企業に拡大すべく、昨年12月の政労使による合意が指摘している「取引企業の仕入れ価格上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力についての総合的取り組み」「サービス業の生産性向上についての取り組み」を推進するための具体策について合意。合意では、経済界に対して、仕入価格の上昇で影響を受けている取引先企業からの聞き取りや、原材料費や需給の変動に伴う損益の分担方法を発注元と取引先があらかじめ合意することなどにより、適正な価格が形成されるよう努めることとされている。また、取引先企業に対する生産・運営管理など生産性向上に向けた支援や、共同での技術・製品開発など高付加価値化の支援に努めるよう会員企業に勧奨することなども求めている。
政府の対策としては、原材料・エネルギーコストの転嫁に関するベストプラクティスが追加された下請取引ガイドラインの徹底、ガイドラインの説明会の開催、下請代金法に基づく監視・取り締まりの強化などを提示している。
また、サービス産業の生産性向上に向けた取り組みとして、サービス業と製造業などの異業種連携の推進が盛り込まれており、政府はベストプラクティスの普及、IT利活用、業務改善などの支援策を取りまとめ、推進することとされている。
三村会頭は、今回の合意について「適正な取引価格の形成に向けた動きを一層広げることが打ち出された」と評価する考えを示した。また、「総論ではなく各論で実行されることが重要。これが実現できれば、賃上げについて未定としている中小企業の多くが賃上げに向かうことも十分に考えられる」と今後の中小企業の賃上げに期待を寄せた。一方、売り上げ拡大に取り組む中小企業の多くが人手不足を最大の課題としていることから、イノベーションによる生産性の向上が不可欠との考えを強調。政府としても、規制改革、経済連携などの取り組みが必要との考えを示した。
安倍首相は、今回の合意で賃上げの環境は整ってきたとの認識を表明。「中小・小規模事業者には、好循環拡大に向けた賃上げについて、最大限の努力を図っていただきたい」と要請した。
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