昨年12月16日、本政労使会議は「経済の好循環の継続に向けた政労使の取り組み」について合意した。日本経済の自立的成長を確たるものとするためには、今春の賃上げの労使交渉が好循環の二巡目を形成しつつあるこの機をとらえ、全国に、中小・小規模事業者に、さらに好循環を拡大することが何よりも重要であると認識する。
かかる観点から、12月16日の合意において指摘した①取引企業の仕入れ価格上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力についての総合的取り組み、②サービス業の生産性向上についての取り組みについて、下記具体策により当該合意をさらに強力に推進することとする。
1.取引先企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた取り組み
(1)経済界による総合的取り組み
経済界は、サプライチェーン全体で好循環が力強く回転するよう、取引先企業の仕入れ価格の上昇などを踏まえた価格転嫁や支援・協力に総合的に取り組む。その一環として経団連は、会員企業に向けて、取引先企業との取引の適正化努力を明記した経営労働政策委員会報告の周知活動を継続する。加えて、①原材料費の高騰など仕入れ価格の上昇で大きな影響を受けている取引先企業に対して、その状況をよく聞き取ること、原材料費の騰落や財・サービスの需給変動に基づく損益の分担方法などをあらかじめ合意するなどにより、価格転嫁を含めて適正な取引価格が形成されるよう努めることなどについて、会員企業に一層の理解と協力を求める。具体的には、全国各地の会員企業に対して直接呼びかける機会を設けるとともに、さまざまな媒体を通じた周知活動を展開する。
②また、①の活動を行う中で、取引先企業に対し、生産・運営管理・人的資源管理など生産性向上に向けた支援・協力、共同での技術・製品開発など高付加価値化に向けた支援・協力などに努めるよう、会員企業に対して勧奨する。
また、日商と全国中小企業団体中央会は、中小・小規模事業者に対し、本決定の内容と趣旨を周知するための活動を展開する。
(2)政府による対応
政府は、在来からの取り組みの継続に加え、以下の追加的措置を実施する。
①14業種の下請取引ガイドラインに、原材料・エネルギーコストの転嫁に関する望ましい取引慣行などの好事例を追加したところであり、今後、産業界に対して、このガイドラインに沿って取引を行うよう徹底して要請する。また、必要に応じ、調査を実施し、改善状況を確認する。
②下請代金検査官や消費税転嫁Gメンが立入検査を行う際、当該下請取引ガイドラインに沿った取引を行うよう要請する。
③全国で約500回の講習会を追加的に開催し、当該下請取引ガイドラインの理解・活用を促進していく。
④下請代金法に基づく監視・取締まりを強化する。具体的には、下請事業者が当該下請取引ガイドラインに沿った取引を要請したにもかかわらず、親事業者が協議に応じず一方的に取引価格を据え置くなどの行為があれば厳正に対処する。また、本年度上半期に、約500社の大企業に対して集中的な立入検査を追加的に実施する。
2.サービス業の生産性向上についての取り組み
生産性向上の潜在可能性が大きく、かつ、雇用などの社会的重要度が大きい分野を念頭に置いて、サービス業と製造業などとの異業種連携による生産性向上に向けた取り組みを推進する。
具体的には、たとえば小売業、飲食業、宿泊業、介護、道路貨物運送業などの分野において、経団連と意欲ある事業者団体またはチェーンオペレーションを行う事業者などが協力し、製造業などの専門家からの助言の機会を通じて、当該業種の生産性向上に向けて課題解決を図る活動を展開する。内閣府および当該業種の事業所管省は、このため、経団連と事業者団体の参加による協議会を分野ごとに設立するなどの枠組み作りを通じて、環境整備を図る。また、内閣官房および関係省庁は、ベストプラクティスの普及、IT利活用、業務改善などの支援策を取りまとめ、推進する。
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