審査に最大2カ月早めの申請を
「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元制度)」に登録したキャッシュレス決済事業者は、全国で223社(6月24日時点)になりました。このうち143社が中小企業・小規模事業者(中小小売店など)向けにサービスを提供するB型決済事業者です。
中小小売店などが本制度に参加するには、このB型決済事業者を通じて加盟店登録する必要があります。現在(6月24日時点)、30社のB型決済事業者で準備が整い、登録受け付けを開始しています。どの決済事業者で受け付け開始しているかは、本制度特設ウェブサイト(https://cashless.go.jp/)をご覧ください。
ここで留意すべき点は、中小小売店などが本制度の始まる10月1日から参加したい場合、加盟店審査に要する期間(「決済事業者」と「補助金事務局」の二つの登録審査に数週間~最大2カ月程度かかる)から逆算すると、「7月中」には登録申請しなければ間に合わない可能性があります(図1)。従来からキャッシュレス決済を導入している店舗もですが、早めにB型決済事業者へ連絡の上、登録手続きを行ってください。
現在、本制度の概要や登録手続きなどを紹介・解説する「中小小売店など向け説明会」を全国で開催しており、日程やプログラムなどをウェブサイトで公開しています。また、説明会に参加できなかった中小小売店など向けに「資料」や「解説動画」も公開しています(図2)。
今後は、中小小売店などに加え、消費者向けの周知広報が始まります。ウェブサイトで消費者向けのPRチラシなどを公開していますが、今後はテレビCMや加盟店での統一ポスター掲示、地図アプリを活用し加盟店位置情報などの情報を発信予定です。おそらく10月以降、多くの消費者がポイント還元対象店舗での買い物を意識し始めると予想されます。消費者から「選ばれる店舗」になるためにも、本制度への参加を検討ください。
導入に向けた検討ポイント
「キャッシュレス決済の導入は検討しているが、何から考えたらよいのか分からない」という中小小売店などが多いと思います。決済手段の種類も豊富で、どういった基準で経営判断すればよいか悩んでいる中小小売店などの皆さまにポイントを解説します。
1.店舗や取扱品・サービスの特徴は? どのキャッシュレス決済手段が自身の店舗に適しているか分からない場合は、次の観点が役立つでしょう。
①客単価が低い店舗は「電子マネー」などプリペイド式の決済を希望する消費者が多く訪れ、逆に客単価が高い店舗は「クレジットカード」決済を希望する消費者が多く訪れる傾向があります。 ②若者や社会人が訪れる店舗は「スマートフォン」を活用した決済が好まれ、逆に高齢者が多い店舗は「カード式(クレジットカード、電子マネーなど)」が好まれる傾向にあります。
③周辺の他の店舗で導入されている決済サービスが、自身の店舗でも利用される可能性が高くなる可能性があります。
2.必要な設備環境は?
導入に当たって新たな決済端末や通信回線の整備が必要なのか、あるいは既にある通信環境やタブレット・スマホなどを上手く活用できるかで初期導入コストに大きな違いが出てきます。このため、導入に必要な環境は何かをあらかじめ確認しておくことが重要です。「QRコード/バーコード決済」では、端末自体が不要な場合があります。
3.いくらかかるのか?
上記2で紹介した環境整備に必要な初期費用や、決済ごとに発生する手数料、付随するサービスや機器レンタルなどの費用、他にも通信費や振込手数料が発生する場合があります。
4.入金サイクルは?
売掛金の入金サイクルは、月1~2回が主流でしたが、最近では月に複数回入金や翌営業日の入金、売上額が一定金額に達した時点での入金など、バリエーションが豊富になってきました。自身の店舗運営に適した入金サイクルを提供する決済事業者を選ぶとよいでしょう。なお、特定の金融機関の口座開設や、入金の振込手数料を店舗側が負担しなければならない場合がありますので、確認が必要です。
5.コスト以外の条件は?
2年間の契約しばりや、特定の金融機関の口座開設が必要といった条件が提示されるケースがあります。ポイント還元制度では、実施期間中(2019年10月~20年6月末)と終了後で条件が異なる決済事業者もありますので、よく確認してください。
6.加盟店の義務は?
本制度に参加した加盟店には、一定の責任や売り上げなどの報告義務が課される場合があります。第3回連載でも紹介した「国や補助金事務局による調査への協力」「ポスターの店頭掲示義務」「消費者とのキャッシュレス取引がキャンセル・取り消しとなった場合に消費者に対して当該取引のポイントが還元されないようにするための決済事業者への報告義務」などが課される点にも留意が必要です。
7.追加導入できるサービスや機能は?
決済機能に加え、売上管理や販促などの機能、海外のコード決済サービスも扱えるなど付加的なサービスが提供されています。「導入したら終わり」ではありません。よりよい店舗運営を実現するためのツールとして、キャッシュレス決済の導入を検討いただきたいと思います。 (一般社団法人キャッシュレス推進協議会)
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