日商 Assist Biz

更新

こうしてヒット商品は生まれた! 福井県立恐竜博物館

展示フロアのほぼ中央に常設されたティラノサウルスのロボット。鳴き声や動作がリアルで、思わず泣き出す子どもも……

来年開館20周年を迎える福井県立恐竜博物館。県の北東に位置する勝山市にあり、決して利便な立地とはいえないにもかかわらず、開館以来順調に入館者数を増やし、現在年間90万人が訪れる県内有数の観光スポットとなっている。一度行ったら「もういいや」となりがちな展示中心の施設において、これほど長く人気を維持する秘密をひもとく。

新種の恐竜の化石発見をきっかけにブランド化へ

福井県立恐竜博物館は、ロイヤル・ティレル古生物学博物館(カナダ)、自貢恐竜博物館(中国)とともに、世界三大恐竜博物館の一つに数えられている。しかも、恐竜全身骨格44体、年間入館者数約94万人と、三つの中で最も多い。

「当館のコアバリューは、本物を含む世界中の恐竜を扱っているところです。そのため、この分野の研究者が世界各国からやってきます」と同館館長の竹内利寿さんは胸を張る。 それにしても、福井県でなぜ“恐竜”なのか。

発端は、1982年に同館の所在地から7㎞ほど奥に行った場所で、偶然ワニの化石が発見されたことだ。調べると1億2000万年前のものだとわかり、「ほかにも出てくるかもしれない」と予備調査が始まり、その結果、恐竜の歯や骨の一部など、多様な化石が続々と出てきた。そこで本格的な発掘調査に乗り出したところ、新種の恐竜の化石が複数発見されたのだ。それを受け、県立博物館の自然科学分野を切り離し、恐竜を中心とした博物館を新設することが決まり、2000年に同館がオープンした。

「世界で認められている日本の新種の恐竜7体のうち、5体は福井で見つかっています。オープン時点ですでに2体が発掘されていたことから、恐竜を福井固有のブランドとしてPRしていこうということになったんです」

話題を集める仕掛けや効果的なイベントで集客増を実現

初年度の入館者数は70万人に上ったが、2年目以降は当初の予想通り25万~30万人で推移した。しかし、「本物の恐竜が体感できる」という強みを発信し、地道にPR活動を行ったことで、入館者数は着実に増加をたどる。開館10周年の年には、ティラノサウルスや福井で発掘された新種フクイラプトルのロボットを常設するなど大々的なリニューアルを行い、50万人の大台を超える。同館はそれにとどまらず、次なるサプライズに取りかかった。

「アメリカのワイオミング州で発見されたカマラサウルスの全身骨格を購入したんです。地中に埋まっている状態のまま船に乗せて日本に運び、4年かけてクリーニングしながら組み上げ、2013年の春に一般公開を開始しました。その効果で入館者が一気に70万人を突破しました」

同館の巧みなところは、折に触れて展示物にまつわる企画やイベントを効果的に打ち出すことだ。例えば、カマラサウルスのときには、通常なら見ることのできない化石の組み上げ作業を、すぐそばで見学できるようにした。それが全国ネットのテレビやメディアに取り上げられ、公開前から世間の注目を引きつけた。さらに公開後も、映画やドラマとタイアップしたり、戦隊ヒーロードラマ「キョウリュウジャー」のロケ地として協力するなど話題を提供した。北陸新幹線開業前には、関東方面からの集客増を目指して、東京を中心に大規模商業施設や水族館などとコラボした恐竜イベントを展開。そのかいもあり、開館15周年の年には90万人を超えた。

「博物館というのは基本的に動かない展示物を見るだけですが、見る人が頭の中で動かすことはできます。館内の見せ方やイベント企画などを工夫して、恐竜はどんな生活を送っていたんだろう、どんな声で鳴いていたんだろうと、想像力をかき立てるようなしかけを常に考えてきたことが、お客さまに足を運んでもらうきっかけになったのではないでしょうか」

おもてなし力を強化して公営施設の弱点克服に取り組む

そしてもう一つ、同館が力を入れてきたのが“体験”である。例えば、5年前に化石発掘現場の隣にオープンした野外恐竜博物館もそうだ。展示場、化石発掘体験広場、観察広場の三つで構成されており、発掘現場の様子を間近で見たり、採掘現場から運んできた石を砕いて化石を探し出すことができる体験型施設になっている。予約制で1日の定員は540人だが、大型連休や夏休みの予約は早い段階から埋まってしまうほどの人気だそうだ。

「ここはリピーターが多いのも特徴です。圧倒的に人気があるのは化石発掘体験で、2年目からは化石発掘コースを新設しました」

こうして子どもから大人まであらゆる世代が学びながら楽しめる博物館へと着実に進化を遂げる一方、入館者の動向や意見にも常に注意を払ってきた。というのも、入館者数が増えるに従い、その満足度の低下がアンケートを通じて明らかになってきたためだ。

「もともと25万~30万人の入館者を想定してつくった施設なので、現在は明らかにキャパオーバーの状態です。そのため『混んでいてゆっくり観覧できない』『トイレやエレベーターが少ない』など、厳しい意見をいただいています。建物の構造上、対応が困難なこと以外は、地道に改善に取り組んできました。さらに公共施設ゆえの弱点でもある“おもてなし力”を強化して、お客さまのニーズに応えられる博物館でありたいですね」と竹内さんは現状の課題の克服に取り組みつつ、「開館20周年を迎える来年には年間100万人の大台を突破したい」と期待を口にした。

会社データ

社名:福井県立恐竜博物館(ふくいけんりつきょうりゅうはくぶつかん)

所在地:福井県勝山市村岡町寺尾51-11

電話:0779-88-0001

HP:https://www.dinosaur.pref.fukui.jp

代表者:竹内利寿 館長

設立:2000年

※月刊石垣2019年8月号に掲載された記事です。

次の記事

樋口メリヤス工業株式会社

大阪府枚方市で1933年に創業した靴下メーカー、樋口メリヤス工業。同社が2017年秋に販売開始した、かかとのない真っすぐな靴下「つつした」が、熱烈なファンをじわじわと増やし…

前の記事

福永紙工株式会社

1963年に東京都立川市で創業以来、名刺や商品パッケージなどの印刷を主軸に請け負ってきた福永紙工。同社はのちに紙や印刷技術の持つ可能性をテーマにした創作にも乗り出し、20…

関連記事

株式会社マーナ

2022年に創業150周年を迎える生活雑貨メーカー・マーナ。長い歴史の中で数々のアイデアグッズを世に出し、ヒットに導いてきた同社で堂々の看板を張っているのが、15年に発売さ…

株式会社リンクライン

特例子会社として2010年に設立したリンクライン。当初よりせっけんの製造・販売を主事業とし、機械では表現できないフォトジェニックな商品づくりに取り組んできた。そんな同社…

石見空港ターミナルビル株式会社

1993年に開港した島根県の西の玄関口、萩・石見(いわみ)空港。その2年前に設立した石見空港ターミナルビルは、空港内施設の賃貸や管理が本業だが、とある理由から養蜂業に進出…