音楽による障がい児支援で山形からダイバーシティを発信
特定非営利活動法人 アジェンダやまがた 代表理事 児玉 千賀子
人とまちを元気にする
平成14年に生まれた長女は知的な障がいをもっております。私はその事実を認められずに、何とか普通の子どもになってくれないかと願う毎日でした。娘を連れて主人と東京からふるさとの山形へ帰ってきたのは、16年のことです。
19年に、知的障がい者にスポーツの場を提供している公益財団法人スペシャルオリンピックス日本の理事長の細川佳代子さん(当時)が、蔵王温泉スキー場で開かれた「スペシャルオリンピックス日本 冬季ナショナルゲーム・山形」を前に来県し講演されました。講演後、自分の悩みを話したところ「何を言っているの。障がい者を幸せにするのは周りの人間。お母さんがそんな風では、お嬢さんはかわいそう。自分のやれることを見つけ前進しなさい」と活を入れられました。細川さんとの出会いが私を大きく変えました。
私が出来ることは何かと模索したとき、娘の存在によってたくさんの困難を抱えた家族と出会ったことで「障がいを持っていてもいなくとも、普通に暮らすことのできるまちがほしい」と思ったのです。同時に、生まれ育った山形市の中心市街地からにぎわいが消えてゆくことに危機感を持ち「これに歯止めをかけよう」とNPO法人を設立、翌年に音楽療法の事業を始めました。予想以上の集客、お子さまの障がいの改善の成果を上げ「音楽療法は障がいを改善できる」と確信を得ました。そこから「中心市街地での福祉と商業の連携によるダイバーシティの実現、中心市街地活性化の実現」という目標が生まれました。現在は、音楽による障がい児通所支援事業所と相談事業所(0~17歳まで)を山形市の中心市街地で運営しています。
音楽レッスンは、一人一人の個性に合わせた音楽プログラムで行います。音楽を感じることで協調性・社会性を育て、発達を促進することが目的です。具体的には「リズム・ビートの感覚をつかむこと」「絶対音で音を把握すること」「調・和声に対する感覚を養うこと」の3つを習得できるよう、プログラミングしています。お子さまも、ご両親さまも、音楽レッスンに通われるうちに、とても明るくなられます。音楽の力を信じ、感じ、全てに感謝しながら、毎日を過ごしております。
新たな地方創生のモデルに
音楽教室をご利用のお子さま、保護者さまから「大人になっても過ごせる場所が中心市街地にほしい」とのご要望をいただくことが多くなりました。現在はこれを実現させるための準備に着手しています。具体的な事業として、来街者を増やすためのコンサートやイベントの開催、商店街・各店舗との連携によるクーポン発行などで、買い物しやすい仕組みづくりを提案する予定です。
会員8名からスタートした当法人は、現在82名が会員となり、多くの方々に支えられています。どんな子どもを産んでも安心して育てられ、いろんな人が行きかうにぎわいあふれるまち。これを実現し、新たな地方創生のモデルを山形から全国へ発信してまいります。
法人データ
法人名:特定非営利活動法人 アジェンダやまがた
所在地:山形県山形市
事業概要:福祉事業(障がい児通所支援事業)
※月刊石垣2016年7月号に掲載された記事です。
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