厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月31日、2019年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を取りまとめた。答申が示した引き上げ額の目安の全国加重平均は27円となった。日本商工会議所の三村明夫会頭は同日発表したコメントで、「『諸般の事情を総合的に勘案し』という必ずしも明確ではない根拠により、大幅な引上げが決定されたが、これにより今年度は約4割であった最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が更に増加することや、中小企業の経営、地域経済に及ぼす影響を懸念する」と指摘した。
各都道府県の引き上げ額の目安は、都道府県の経済実態に応じて全都道府県をABCDの4ランクに分けて提示。Aランク(6都府県)は28円、Bランク(11府県)は27円、Cランク(14道県)は26円、Dランク(16県)は26円だった。
審議会に先立ち開催された目安に関する小委員会(中央最低賃金審議会の下部組織)は、労使双方の意見に大きな隔たりがあることから、最終的には公益委員による見解が示されることになり、その見解が審議会の答申となった。今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見なども踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定する。
同小委員会では使用者側委員から、「最近の経営環境は、労働力の確保が困難な状況による人件費の高騰など、経営コストの上昇圧力が非常に強く、先行きに対する不安は根強い。また、中小企業の労働分配率は70%台で推移しており、賃金支払い能力が乏しい中、極めて高い割合で賃金原資を捻出している」と中小企業が置かれている厳しい経営環境を強調。「最低賃金は全ての企業・使用者にあまねく適用され、下回る場合は罰則に対象になることから、通常の賃上げとは性格が異なる。また、最低賃金制度は、賃金の低廉な労働者に対するセーフティーネットであり、賃金引き上げや消費の拡大といった政策を目的としたものではない」として、近年の大幅な引き上げによる企業経営への影響を十分に考慮し、中小企業が自発的に賃金引き上げをしやすい環境を整備するよう主張してきた。
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