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テーマ別企業事例 “ヒット”防災商品はココが違う!

事例2 災害を見越した5年間保存可能なカンパンの開発で社会へ貢献

ブルボン(新潟県柏崎市)

新潟県柏崎市に本社を置く大手菓子メーカー・ブルボン。焼き菓子を中心にバラエティー豊かな商品を世に出す一方で、地道につくり続けてきたのが、カンパンをはじめとする保存食だ。時代が変わり、食糧事情が豊かになった今でも、素朴で飽きのこない味わいを守りつつ、5年の長期保存を可能にして需要を伸ばしている。

家庭用サイズの「カンパン」は100g、24個入り。ほかに行政機関や学校、企業の備蓄向けに、一斗缶サイズもある

カンパン製造の再開を決意させた阪神・淡路大震災

100年近い歴史を誇る大手菓子メーカー、ブルボン。同社の成り立ちは、実は災害と無縁ではない。同社の前身は最上屋という老舗和菓子屋だが、その業態に大きな転換をもたらしたのは、大正12年に起こった関東大震災だ。

「ものづくりも物流もマヒし、関東でつくられていた菓子の地方への供給は全面ストップしました。その窮状を目の当たりにした創業者が、『地方にも菓子の量産工場が必要』と、その翌年にビスケットの製造を開始したんです」と同社四代目社長の吉田康さんは創業当時の様子を説明する。

ビスケットは「ビス=二度」「ケット=焼く」が語源で、二度焼かれたもの・パンという意味だ。同社では、栄養があり保存もきく焼き菓子をつくっていたが、昭和12年に当時の陸軍の要請を受けてカンパンの製造にも乗り出す。小麦粉が主体で油脂や砂糖が入っていないため酸化しにくく、長期保存ができることから、軍隊の携帯食として重宝がられた。その生産は戦後もしばらく続いたが、次第に油脂や砂糖の入ったソフトで口当たりの良い菓子を量産するようになり、いつしかカンパンの製造はストップした。

その後、チョコレートやスナック菓子、米菓など、数々の菓子を世に送り出し、業績を拡大していく。その一方、新たな需要を見越してペットボトル入りの水の生産も始める。

「実は、工場で水の製造を開始したその日に、阪神・淡路大震災が起こったんです。かろうじて、日本海側から兵庫県明石市に抜けて神戸に向かうルートが使えたので、ボトル詰めした水を急きょ救援物資として震災の翌日に配送することができました。同時に、『なぜカンパンの製造を止めてしまったのか』と改めて保存食の重要性を感じて、その年の秋に製造を再開したのです」

時代に合わせた工夫と長期保存を実現

時代は変わっても、レシピはほとんど同じだ。ただ、戦前と比べてかむ力が弱くなっている現代人のために、食感がソフトになるように焼き方を工夫した。また、災害時はストレスにより胃腸の働きが低下しやすいので、消化吸収が良くなるように、アルファ化した小麦粉を使用した。完成したカンパンは密閉性の高い缶に入れ、脱酸素剤を封入して、5年間の長期保存を実現した。

「カンパンには、昔から金平糖(コンペイトー)や氷砂糖が一緒に入っています。これは糖分で唾液の分泌を促して、食べやすくするためです。また、糖分が中の湿気を吸収してくれるので、保存性の向上にも一役買っています」

同社はさらに、保存食用のミルクビスケットとミニクラッカーを開発する。味わいのあるものも提供したいとの思いからだ。これらは油脂や砂糖を含んでいるため酸化の恐れがあるが、試行錯誤を繰り返して保存性を高めた。

こうした一連の保存食は阪神・淡路大震災以降、防災意識の高まりに合わせて、着実に需要をつくり出していった。また、東日本大震災以降は、行政機関や公共施設、学校などで保存食を備蓄するところが増えており、5年間保存できるという経済性から、同社製品は広く選ばれている。

誰もが食べられる万能保存食をつくりたい

保存食とはいえ、ただ長期間保存できればよいというものではない。飽食の時代に生きる現代人にとって、非常時だからと同じものを食べ続けるのはつらいものだ。

「以前、食育の授業で、小学生に保存食のカップラーメンを食べてもらったことがあるんですが、2日目には『もう食べたくない』と嫌な顔をしていました。どんなに好きなものでも、毎日だと飽きてしまう。その点、カンパンは飽きのこない味なので、主食代わりになる。今後は副食となる保存食の開発にも力を入れていきたい」と話す。

さらに同社は、新潟県が音頭を取って設立した「健康ビジネス協議会」の一員として、新たな取り組みを始めている。同協議会では、災害食の定義と基準を明確にする「おもいやり災害食認証制度」を今年6月に施行し、さまざまな事情を持つ人が安心して食べられるようにした。今ある保存食の多くは、病気やアレルギーなどを想定してつくられておらず、カンパンも乳幼児や高齢者は食べにくい。災害時において、誰もが安心して食べ物を選べるように、新たな表示を設けたのだ。現段階では食べられないものを間違って選ばないようにするのが主な目的だが、ゆくゆくは持病やアレルギーのある人、高齢者、ハラルなどに関係なく、誰もが食べられる万能保存食をつくりたいという。

「災害は増えており、保存食に対するニーズの高まりを感じます。それに応える多様な商品をつくるのは、食品メーカーであるわれわれの使命。さらに、つくった食品をどんな状況でも届けられる物流の仕組みや、届いた食品をスムーズに仕分けできるスペースの確保なども不可欠です。現在、そうしたインフラの整備も進めていて、いざというときに役に立てる会社であり続けたい」と吉田さんは、今後の抱負を力強く語った。

会社データ

社名:株式会社ブルボン

所在地:新潟県柏崎市駅前1-3-1

電話:0257-23-2333

HP:https://www.bourbon.co.jp/

代表者:吉田 康 代表取締役社長

従業員:約4900人

※月刊石垣2017年9月号に掲載された記事です。

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