日本商工会議所は5月16日、環境省が実施した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」に対するパブリックコメントへ意見書を提出した。同意見書は、2018年11月に日商が公表した「『長期低排出発展戦略』に対する商工会議所意見」を踏まえ取りまとめられた。
20年以降の温室効果ガス排出削減などのための新たな国際枠組みである「パリ協定」では、温室効果ガスについて低排出型の発展のための長期的な戦略を策定することが求められている。このため、政府はパリ協定に基づく日本の長期戦略の案を取りまとめ、意見募集を行っていた。
同意見書では、「環境と成長の好循環」が明記されたことを支持。最終到達点としてカーボンニュートラルな社会を野心的に実現するビジョンを掲げ、それを実現するビジネス主導の非連続なイノベーションを推進するという本戦略の骨格については、先に決定した「エネルギー基本計画」とも合致していることから、賛同の意を示している。また、自国のみにこだわらず地球全体でCO2を削減する視点を持ちながら、国際的なルールづくりに当たっては、諸外国における日本企業などによる技術供与支援などの取り組みの成果を、わが国の実績として評価できるような仕組みを設けることを求めている。
排出削減対策については、再生可能エネルギーの普及において、FIT(固定価格買取)制度からの自立と国民負担の抑制が早急に行われるよう要望。系統制約の克服に当たっては、既存系統の最大限の活用を行った上で、将来の需給見通しに基づく増強の必要性や費用対効果の検討を慎重に行うことを要請している。
さらに、石炭火力発電について、非効率な発電所のフェードアウトを支持。一方、日本の高効率・低炭素な石炭火力発電技術を維持・向上させ、諸外国における石炭火力発電プロジェクトへの技術提供を通じて、世界全体のCO2削減に貢献することの必要性を述べている。
原子力発電については、安全性を最優先させた上で再稼働を推進する方針を支持。新型炉の開発と新増設の議論を早期に開始するとともに、バックエンド問題の対処に当たっては国が前面に立って国民理解を得るよう要望している。
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