日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2016年6月1日号 丁野朗

数年前から言われ始めた六次産業化。農業経済学者で東京大学名誉教授・今村奈良臣さんの命名という。その意味は農林水産品の加工・販売や観光農園、グリーンツーリズムなど、第二次・第三次産業分野を絡めた高付加価値化である。

▼2010年には、いわゆる「六次産業化法」も成立した。千葉県富浦町(現南房総市)の道の駅「枇杷倶楽部」や、ユズの加工品で有名になった高知県馬路村などの数多くの事例もある。

▼他方、地域資源を活用して集客交流を図る観光は、それ自体が「六次産業」と呼ばれることがある。農林水産業はもとより、ものづくりの工場・工房、アウトレットモールなどの商業施設や商店街なども、いまや重要な観光コンテンツとなっている。そればかりか近年は医療や健康などのメディカル、再生可能エネルギーといった分野も観光の対象となっている。地域の伝統産業や工芸の再生など、あらゆる産業の営みを観光対象とする「産業観光(Industrial Tourism)」は、いまや観光分野の中でも中核の一つとなっている。

▼今日、観光は20兆円を超える大きな産業に成長した。特に近年の訪日外国人客の増加で、国際収支も1兆円の黒字を計上する「輸出産業」にもなっている。

▼その反面で「うちの地域には観光資源がない」という声をいまだに耳にする。しかし産業のない地域はどこにもない。ないのは、その資源性を見抜く「眼力」や編集視点、加工・マネジメントの力なのであろう。

▼観光分野と連携した地域資源活用は、地域に新たな産業・雇用の場を創出することである。各地の商工会議所こそ、これらの事業を推進・指導する最も近い位置にあるものといえよう。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

次の記事

時事通信社監査役・中村恒夫

「『一億総活躍社会』を『従業員総活躍会社』に読み替えて経営に取り組めば、企業としての生産性も向上すると思う」。中堅企業の取締役に就任が内定した知人はこう話した。意欲…

前の記事

文章ラボ主宰・宇津井輝史

一片のブログから保育園不足が国会論議になったのは記憶に新しい。ソーシャルメディアが社会を動かす力を持った証左だが、一方で税金が必要なところに使われていないのでは、と…

関連記事

政治経済社会研究所代表 中山文麿

今回の米国大統領選挙は、トランプ氏を絶対に再選させたくない民主党と熱狂的な支持者からなるトランプ党との戦いだった。トランプ支持者は戸別訪問などどぶ板選挙も行い、前回…

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

アニメ映画「鬼滅の刃・無限列車編」が空前ともいえるブームを巻き起こしている。目を見張るのは観客動員数だけでなく、関連グッズの多さだ。二番煎じ以降になると、効果もそが…

東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗

2015年に創設された「日本遺産」は、今年6月、新たに21件が認定、合計104件となり、当初予定の認定数に達した。今後は新たな認定は行わないが、そのさらなる磨き上げに力を入れ…