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コラム石垣 2016年6月11日号 中村恒夫

「『一億総活躍社会』を『従業員総活躍会社』に読み替えて経営に取り組めば、企業としての生産性も向上すると思う」—。中堅企業の取締役に就任が内定した知人はこう話した。意欲と能力に基づく人事配置と適切な指導力があれば、結果はついてくるはずだ、と考える新任役員は少なくないだろう。無論、経営はそんなに簡単ではない。

▼産業界で最近注目されているのが「健康経営」の必要性だ。中堅・中小企業では、労働条件の改善に取り組むのが精いっぱいで、従業員の健康状態にまで配慮が及びにくい。しかし、病気で従業員が休職すれば、直ちに会社全体の戦力ダウンにつながってしまうのも確かだ。

▼それだけではない。経済同友会で健康経営の実践を求める提言をまとめた橋本孝之日本IBM副会長は、労働生産性を高めるには、会社に来ているが病気を抱えていて生産性が低い「プレゼンティーイズム」の状態を解消していくことも重要だと指摘する。従来は、病気になった社員への配慮に重点が置かれがちだったが、橋本氏は病気に向かいつつある「未病」の従業員を「健康状態に引き戻す」のも経営者の責務だと強調。自社に健康保険組合がない中小企業でも外部機関と連携すれば、従業員の健康状態を把握することは可能だと話している。

▼従業員からは、生活習慣の改善を口実に、私生活まで管理を強化しようとしていると警戒する声が出るかもしれない。経済産業省の推計では、健康に取り組む上場企業の時価総額の推移を見ると、東証平均株価を上回る実績を残している。従業員の健康と業績がリンクしている証拠であり、経営者は自信を持って健康経営の実践を打ち出していいのではないか。

(時事通信社監査役・中村恒夫)

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