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コラム石垣 2016年6月21日号 中山文麿

今回の米大統領選挙では、当初、泡沫候補と見られていたトランプ氏が共和党の代表に指名されたり、民主党では、「民主社会主義」を唱えたサンダース上院議員が異例の健闘をした。今、米国の民主政治に何が起きているのだろうか。

▼トランプ氏はメキシコ国境沿いに万里の長城を築けとか、イスラム教徒を入国させないなどの暴言を吐いた。以前であれば、この一言で大統領候補失格であった。しかし、今回は違った。彼の過激で率直な主張はアメリカンドリームから取り残された国民、とりわけ経済格差に不満を抱いた労働者の共感を産んだ。

▼また、国民は既存の政治家は自分たちのために政治をしてくれていないと感じている。議会に対する支持率を見ても2001年は84%と高かったのに、今や15%にまで低下した。この反ワシントン感情は公職に就いたことの無いトランプ氏にはむしろ有利に働いた。

▼一方、サンダース氏は多額の学生ローンと就職難にあえいでいる若者たちに呼び掛けた。公立大学の授業料の無償化を説くなど、社会主義的な政策を掲げてミレニアル世代の圧倒的な支持を得た。

▼サンダース氏は予備選でヒラリー氏との勝負がついているにもかかわらず撤退しなかった。米国の政治の中に左寄りの遺伝子を埋め込もうとしている。彼を支持する若者たちも、この先10年か20年先に米国の国のかたちを今とは違ったものにしたいと望んでいる。

▼米国は世界の警察官から降りたとはいえ、この国の動きは世界の政治や経済に多大な影響を与える。米国の民主主義、経済自由主義、多様性を重んじる国家理念が、この先どのように変容していくのか、あるいは変わらないのか注視していきたい。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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