コラム石垣 2016年7月1日号 神田玲子

広島を訪問したオバマ大統領は、人間社会に同等の進歩がないまま技術が進歩すれば、私たちは破滅すると語った。技術を良くも悪くもするのは人間社会であり、それは制度やシステムで規定されるということだろう。

▼原発の開発者、それを実用化する人、利用する人、評価する人。社会はさまざまな人で構成される。そうした人々の行動をルール化し、規律を持たせるのが社会制度である。ルールが技術の進歩に追いついていなければ、科学技術の成果が社会を破滅させることもある。それを防ぐには、法律や仕組みを適正なものに変えていかなければならない。

▼20世紀は、残念ながら二つの大戦と米ソ冷戦で象徴される時代となった。21世紀を左右する科学技術が人工知能であることに疑う余地はない。歴史を繰り返さないためには、人工知能のルールづくりそのものを見直す必要がある。

▼現在の制度は、問題の発生後に、審議会や政府、そして国会で議論を行い策定される。こうした方法では、対応が後手に回り、民間事業者の意識も希薄になりがちだ。人工知能の開発は、問題が起きてからでは遅い。問題が起きたときにはすでに世に普及しており、制約を課すコストも大きくなる。しかも、開発者が誰かもわからないものがある。ビットコインの仕組みを開発した「サトシ・ナカモト」が誰であるかも不明だが、皆が使い始めている。

▼人工知能を人類にフレンドリーなものにするためには、開発当事者をより深くルールづくりに関与させていくことが求められる。それはあまたの民間事業者の中に政府が入って共同で構築していくことになるかもしれない。21世紀はルールづくりのための新しい仕組みが必要だ。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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