コラム石垣 2016年4月21日号 中山文麿

今年2月、米チームが重力波を観測したとのニュースが世界を駆け巡った。重力波はアインシュタインが100年前に一般相対性理論の中で予言したもので、それを観測することは彼の最後の宿題ともいわれていた。

▼2015年9月14日、午前9時50分45秒に、アメリカのルイジアナ州にあるLIGO(重力波観測装置)が0・2秒間重力波の波形を観測した。そして、0・007秒後に、今度は3000㎞離れたワシントン州にあるLIGOが同じ波形を記録した。

▼重力波は全ての物質を透過して減衰することなく進む。今回の重力波は10のマイナス21乗のひずみを起こした。この大きさは地球と太陽の間の距離を水素原子1個分の大きさをゆがめるのに相当する。

▼この観測で得られた波形から、13億光年離れた所で太陽の29倍と36倍の大きさのブラックホールが合体して62倍の巨大なブラックホールが誕生したことが分かった。合体で失われた3倍分の質量が重力波のエネルギーとして使われ全宇宙空間をゆがめる波として伝わった。

▼重力波を起こす原因はブラックホールの合体以外に超新星爆発や連星中性子星の合体などがある。これらの3形態の現象から生ずる重力波の波形は理論的に分かっており、観測された波形を見れば容易に区別が可能である。

▼宇宙を観察する手段は、ガリレオのころの可視光の望遠鏡、次に赤外線やX線などの電磁波を利用した望遠鏡などによって行われてきた。それが今度われわれは重力波という新しい観察手段を手に入れた。この望遠鏡はビッグバン後、熱過ぎて光が直進できない38万年までの宇宙の状態を調べるのに有効な手段となる。人類の知的好奇心はとどまることを知らない。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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