コラム石垣 2016年5月1日号 神田玲子

政局も絡んで消費税率の引き上げ時期についての議論が進んでいる。熊本地震に見舞われた人々に思いをはせれば引き上げを延期すべきという意見には一理ある。しかし、消費税は日本の将来を決める重要な問題であり、同時に専門家による冷静な議論を積み重ねる必要があることを忘れてはならない。

▼現状の消費税引き上げを巡る識者の見解の相違点はいくつかに絞られる。その一つは、消費税率の引き上げによってどれだけのマイナスの影響が予想されるのかという点である。延期を主張する側の論理は、消費税率引き上げによってデフレ脱却が困難になると元も子もないというものだ。仮にそうだとしても、それを回避するための手立ては減税を含めて多々あり、意見の相違を超えて一歩議論を進ませることはできるはずだ。

▼二つ目は、政策の優先順位の問題である。公共事業による需要増、あるいは構造政策による生産性の向上、あるいは、財政規律や世代間の公平性など意見が分かれる。だが、この点は日本が過去20年間繰り返して議論してきた問題でもあり、日本経済の実態を踏まえて、建設的な政策議論を展開することは可能だ。

▼三つ目は、消費税を実施することによるメリットは何かという点である。財政維持や世代間公平性のためという意見が多いが、一部には、成長にもプラスに働くといった意見もある。抽象論に終始するのではなく、国民が納得できるように、具体的な姿を提示していくべきだろう。

▼団塊世代が後期高齢者になる2020年代初めまでに残された時間は少ない。間近に選挙を控えた政治家に公平な判断を促すためにも、専門家による柔軟かつ真摯(しんし)な議論が必要なことは明らかである。

(神田玲子・総合研究開発機構理事)

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