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コラム石垣 2015年10月21日号 中山文麿

今年9月半ば、ハンガリーはセルビアから押し寄せた難民に対して国境を閉ざし、放水銃と催涙ガスを打ち込んだ。この国は1989年のベルリンの壁崩壊の数カ月前、人道的に国境を開いて、東ドイツ市民が西側に脱出するのを助けた。俗に「ピクニック計画」と呼ばれ当時世界の賞賛を浴びた。

▼かつてドイツのワイツゼッカー大統領は「ドイツは人種、宗教、政治上の理由で迫害を受けた人に対しては門戸を開かねばならない」と説いた。また、西側を目指す難民の間には「メルケル首相は無制限に自分たちを受け入れてくれる」という情報がツイッターで駆け巡っていた。

▼ 今回、ドイツをめがけて押し寄せた難民のほとんどがシリア人である。シリアでは現在アサド政権、反政府軍とイスラム国(IS)の三つどもえの戦いが続いている。これらの戦闘によってシリアに国内避難民が800万人、トルコを中心に周辺国に400万人の難民が生じた。アメリカを中心とした有志連合や、最近はロシアもISを叩くと称して空爆を行っている。さらに多くの難民が、これらの爆撃によってドイツを目指しそうである。

▼欧州連合(EU)は、これまでの難民に対する門戸開放の受け入れ策から流入規制に軸足を移しそうだ。今年末には欧州国境・沿岸警備隊やイタリア、ギリシャなどに難民管理センターを設置しようとしている。国連もまた9月末に持続可能な開発のための2030アジェンダを採択し、難民対策に本腰を入れる構えだ。

▼安倍首相も先の国連の総会で970億円の難民支援を行うことを表明した。「積極的平和主義」が看板倒れ終わらないようにしてもらいたい。われわれも一人一人が何ができるか真剣に考えねばならない。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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