いわゆる「女性活躍推進法」が制定された。301人以上の従業員を雇用する企業は来年4月までに採用人数や管理職に占める女性の割合を把握。その上で、女性登用などの行動計画を当局に届け出るとともに公表することが義務化された。300人以下の企業にも実施に向けた「努力目標」が課せられ、対外的な信頼性の確保や採用の安定化に向けて検討を開始した中堅企業が少なくない。
▼海外に比べ、日本企業が長く男性中心だったのは確かだ。いろいろな背景や環境の違いがあるにせよ、企業のグローバル化が進む中で、国際水準に近づく努力が必要だろう。一方で、組織の中で幹部になることだけが「女性の輝く社会」につながるかという点については疑問を感じる。
▼全国商工会議所女性会連合会の第13回女性起業家大賞で特別賞を受賞したヒトデザイン社長の伊藤純子さんは「自分らしく能力を生かせる仕事に就くことが大事だ」と訴える。組織で指導的な立場になることが合っている女性もいれば、自ら起業する人、あるいは家庭の都合に合わせて働く人など、本人が充実感を得ているかどうかが重要ではないだろうか。
▼消費者の半分を占める女性。その視点を生かせば、起業は男性よりも向いている場合があるとしばしばいわれる。ただ「自分がこの分野が好きだから」という理由だけで起業する危険性も伊藤さんは指摘する。「自分の強みが『誰に役立てるのか』を考えるべきだ」と話す。
▼一部の自治体では起業を促すために、サテライトオフィスの提供だけでなく無料で専門家が相談に応じる制度を講じているところもある。事業に関する基本的な知識のない女性でも簡単に利用できるような相談システムの構築が望まれる。
(時事通信社監査役・中村恒夫)
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