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コラム石垣 2015年9月11日号 神田玲子

第15回世界陸上競技選手権大会が閉幕した。大会期間中、世界各地から北京に集まった一流アスリートの競技に世界中の目がくぎ付けとなった。しかし、皮肉なことに、同時期、世界中の市場関係者が中国経済の先行き懸念で乱高下する株価にくぎ付けとなった。今後、中国経済の動向はどうなるのか。過剰投資から「ニューノーマル」への調整は失敗し、景気はさらに深刻化するのか。

▼2008年の世界金融危機のショック時に、中国が積極的な財政支出を行うことで世界経済を下支えし、大国としての責任を果たしたことは記憶に新しい。経済規模の点で、アメリカに次ぐ世界第2位の大国となった中国は、いまはアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設や「一帯一路」政策に乗り出し、大国として振る舞っている。

▼しかし、急速な大国化は、国民に誇りと自信をもたらすが、それは時に脆弱(ぜいじゃく)な基盤を抱えていることも多い。日本も石油危機を乗り越え、世界第2位の地位に上り詰めたとき、同様の高揚感を味わった。しかし、後から振り返れば、米国と肩を並べたと思えたのは、かなり幻想に近かったのではないか。

▼中国に限らず、高い成長は農業から製造業への人口移動による生産性の上昇によって実現する。ところが、急速な都市部への人口流入に、住宅や育児などの社会制度の適応が追い付かず、核家族化、独身世代の増加につながる。その結果、高齢化と労働力不足が生じ、成長にブレーキが掛かることになる。実は、一人っ子政策を実施した中国は、高齢化が進み、これまでの急速な成長によるレガシーに直面する懸念がある。世界が中国の動向を固唾(かたず)をのんで見守っている。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査理事)

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