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コラム石垣 2015年9月21日号 宇津井輝史

夏の甲子園は盛り上がった。高校野球100周年の記念すべき大会にふさわしい好試合が続いた。話題の選手だけでなく、走攻守にわたり野球の醍醐味を示すプレーを見せた。逆転に次ぐ逆転こそ甲子園の真骨頂である。

▼夏の大会はトーナメント方式。地方大会と甲子園を通じて負ければ次の試合はない。出場約4000校は、頂点に立つ1校を除いてすべて負ける。だから選手たちは最後まであきらめない。その結果生まれるのが逆転劇だ。

▼1978年のPL学園5―4中京、98年の横浜7―6明徳義塾、06年の智辯和歌山13―12帝京など、高校球史に残る逆転試合を記憶するファンも多かろう。片方に感情移入せず、どちらにも勝たせたいと思って観るスポーツは滅多にない。

▼前身となる全国中等学校優勝野球大会が始まったのは、日本も参戦した第1次世界大戦さなかの1915(大正4)年である。参加は10校だった。大会の目的はいまも昔も青少年の健全育成にあるが、78年の60回記念大会から採用された各都道府県1校制(東京と北海道は2校)が人々の郷土愛を刺激した。いまでこそ東北や北海道勢にも強豪校が少なくないが、かつては西高東低だった。冬場の練習環境に恵まれない雪国のチームを強くしたのはもちろん厳しい鍛錬である。

▼一方そのころから目立つようになったのが特待生。有力選手がひしめく関西地方から野球留学する選手が増えた。メジャーリーグで活躍するダルビッシュやマー君もそのひとりだ。全国の戦力が均質化するのは良い傾向だが、行き過ぎれば郷土チームの意義を薄めかねないのでいまは一定の制限がある。必要な人材を必要とされる場所で活かす思考は、課題の地方創生にもあてはまる。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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