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コラム石垣 2015年6月11日号 丁野朗

訪日外国人客が急増している。2013年は念願の1千万人を突破し、大きな話題になったが、昨年はさらに1341万人と2年連続で過去最高を記録した。この勢いは今年に入ってからも持続、1~3月の四半期だけで413万人。対前年の44%増という驚異的な伸びを見せている。この結果、14年の訪日外国人客の旅行消費額は2兆円を突破、観光収支は実に半世紀ぶりの黒字となった。

▼この背景には、短期滞在査証(ビザ)発給要件の大幅緩和、消費税免税制度の拡充、アジア地域の経済成長、円安進行による訪日旅行の割安感の浸透といった要因がある。実際、免税と円安効果は大きく、自国よりも大幅に安い高級ブランド品の購入、いわゆる「爆買い」現象にもつながっているのであろう。

▼しかし、こうした現象は今のところ東京・大阪など一部大都市圏やゴールデンルートに限定されている。多くの地方都市では、免税店はもとより、訪日外国人向けのモデル周遊ルートやガイド・インタープリターなど、受け入れ環境の不備が目立つ。

▼日本商工会議所が先ごろ取りまとめた提言「国と地域の再生に向けた観光振興について」では、インバウンド効果を地方にも波及させるため、地域の拠点(ハブ)となる都市と地方都市を結ぶ新たな観光ルート開発やアクセス改善などを提言した。さらに観光を単なる交流人口拡大に終わらせず、これをはしご(レバレッジ)とした新商品・サービス開発などによる地域産業の活性化や移住促進など地域社会の再生に係るさまざまな施策に言及している。観光はますます地域の総合力が試される時代を迎えた。多くの地域の創意と工夫も試されているのである。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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