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コラム石垣 2015年6月1日号 宇津井輝史

西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱だが、世界保健機関(WHO)は先月、リベリアでの終息を宣言した。ギニアやシエラレオネでも国際的な努力が続く。

▼流行は2013年12月にギニアで始まった。いかなるウイルスも自己増殖ができないから、彼らは侵入した生物の細胞が増殖する仕組みに便乗する。ヒトの体内で増えたエボラウイルスは肝臓や腎臓の機能を破壊する。治療薬はまだない。

▼人類の歴史は得体の知れない病との闘いだった。原因や治療法が分からない未知の奇病が人々を絶え間なく襲った。いまでこそ対処できるペストも、中世ヨーロッパの人々には悪魔がもたらした災禍としか思えなかった。患者が出ると、神にとりなしてもらおうと司祭を呼んだ。14世紀の欧州は、この黒死病で人口の4分の1を失った。市民の7割が死亡した都市もある。見えない病原菌とは闘いようがなかったのである。

▼ペストをはじめ、天然痘、マラリア、コレラなどの感染症は、もともと動物に特有の病気だったが、いまでは人間だけに感染するやっかいな敵である。ウイルスの目的は他の生物と同様、子孫を残すことにある。感染者が起こす下痢や咳は、子孫をばらまくウイルスの戦略だ。感染したヒトを殺すのはウイルスの自殺行為だが、効率よく感染させればウイルス全体としてモトがとれる。

▼動物から人間に感染するようになったのは、人口が増え、文明が自然を侵食し、ヒトと動物の接触領域が広がったためである。エボラウイルスも自然宿主は熱帯に生息するオオコウモリと考えられている。医学という学問体系に支えられた医療技術は、新たな敵を撲滅させうる文明だが、敵をつくるのもまた人類の文明なのである。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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