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コラム石垣 2015年5月21日号 神田玲子

20世紀は大都市の時代だった。人口が増加し、多くの人が職を求めて都市に集まり、大都市が誕生した。道路、電力、鉄道などの生活インフラが張り巡らされ、都会に移り住んだ人々の生活を支えた。集積して暮らすことで、人々は効率のみならず、快適さや楽しさを手に入れることができた。

▼しかし、21世紀は、主要な先進国で人口が減少する縮小の時代である。人口の増加によって膨張した都市を、再び、人口が少なかったときと同じ大きさのまちに縮小させるコンパクトシティの流れは、日本だけではなく、先進国で始まっている。集積によってにぎわいを見せた都市の風景も変わっていく。

▼しかし、コンパクトだけでは、都会の生活を経験した現代の人々を魅了する都市にはならない。建築家の隈研吾氏は、自身の提唱する「ムラ論」についてのインタビューの中で次のように応えている。「『ムラ』とは、その場所に密着した暮らしがあると同時に、最先端の感性とネットワークが集まる磁場を持つ、従来の『村』とは異なる、グローバルなフィルターを兼ね備えた新しいコミュニティだ」と。つまり、閉鎖的な「村」へ戻るのではなく、研ぎ澄まされた感性とグローバルなネットワークを形成する磁場をもつ「ムラ」へと脱皮していく必要があるということだ。その考えは、コンパクトなまち並みとも、十分に共存する。

▼現在、市町村が中心となって、人口減少を前提とした計画の策定作業が行われている。しかし、いくら素晴らしい計画ができても、「感性」と「磁場」をもたらすことはできない。それらはおそらく計画ではなく、意外性から生まれるからだ。都市づくりの本質が問われている。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査理事)

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