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コラム石垣 2014年10月1日号 宇津井輝史

かつて海外土産の定番はスコッチウイスキーだった。この蒸留酒が、琥珀色に輝いて芳醇な香りを放つようになったのは300年ほど前のことだ。スコッチの故郷スコットランドを併合したイングランドは、ウイスキー課税を強化する。ならばと醸造業者は樽に隠して出荷調整した。しばらく寝かせた樽から生まれたのがいまのスコッチである。

▼そのスコットランドで9月18日、英国からの独立を問う住民投票が行われた。結果は反対多数。英国は胸をなでおろしたが、世界の潮流に一石を投じたのは間違いない。

▼英国は4地域から成る連合王国。人口はイングランド5千万に対しスコットランド500万。少数の民が反旗を翻した理由は経済問題だ。北海油田を持つ後者は、経済の主導権を握る前者に不満を募らせてきた。新自由主義を推進したサッチャー改革は、北欧型の社民主義を志向するスコットランドの貧富の格差も広げた。英国唯一の核基地がスコットランドにあるのも、英国から離脱を求める理由になった。寄りかかるべき共同体は、英国より大きなEUというわけだ。

▼国民国家の多くは複数民族国家だ。スコットランド人のように二重の帰属意識を余儀なくされる民は少なくない。彼らは固唾をのんで投票を見守ったことだろう。欧州ではスペインのカタルーニャ、ベルギーのフランドル。ウクライナでは東部の帰属をめぐるロシアと欧州のぎりぎりの綱引きが続く。イスラム世界では国民国家の枠組みさえ否定する勢力が勢いを増す。

▼グローバル化がもたらすひずみを乗り越えるには、主権国家の規模は小さい方がいいという選択。究極の自治「独立」を求めたスコットランドの要求は、世界の何かが変わるスイッチを入れた。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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