日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2014年10月11日号 丁野朗

今年6月、ドーハで開催された世界遺産委員会で、富岡製糸場が晴れて世界遺産に登録された。

▼富岡製糸場は、世界文化遺産の6つの登録基準のうち、「建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの」「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」という2つの基準が推薦理由となった。

▼富岡製糸場は、日本の近代化のごく初期の段階で、フランスからの近代的器械製糸技術の導入・移転に成功した。その背景には、地元での長年の養蚕・製糸の伝統がある。日本の製糸技術・産業発展の拠点となり、20世紀初頭の世界の生糸市場における日本の役割を証明するモデルとなった。当時としては世界最大級の大規模工場であったが、建物自体は、和洋折衷という日本特有の産業建築洋式の初期のモデルでもあった。

▼世界遺産登録前から、富岡には多くの観光客が押し寄せている。登録後9月半ばの3連休には、1日の入場者が9千人を超える大混雑となった。このまま推移すれば年間120万人ほどの入場者になるとの予想もある。人が歩けばまちはよみがえる。長年、眠ったようなまちが一気に目覚めたかのようだ。

▼しかし、ブームは必ず沈静化する。そのときをにらんだ持続的なまちづくりのビジョンづくりこそが急務である。

▼世界遺産登録では戦略上4つの構成資産に絞り込んだ。しかし、北関東に数多く残る養蚕・製糸・絹織物の文化は、横浜とつながる日本のシルクロードである。富岡製糸場を真の人類遺産とし、世界に向けてアピールするには、こうした広域連携による取り組みが不可欠であろう。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長丁野朗)

次の記事

時事通信社経理局長・中村恒夫

景気の回復傾向を背景に、来春の新卒予定者の就職内定率が高まっている。「売り手市場」とすらいわれるほどで、必要な人材の確保に苦しんでいる中堅・中小企業は少なくないよう…

前の記事

文章ラボ主宰・宇津井輝史

かつて海外土産の定番はスコッチウイスキーだった。この蒸留酒が、琥珀色に輝いて芳醇な香りを放つようになったのは300年ほど前のことだ。スコッチの故郷スコットランドを併合…

関連記事

政治経済社会研究所代表 中山文麿

今回の米国大統領選挙は、トランプ氏を絶対に再選させたくない民主党と熱狂的な支持者からなるトランプ党との戦いだった。トランプ支持者は戸別訪問などどぶ板選挙も行い、前回…

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

アニメ映画「鬼滅の刃・無限列車編」が空前ともいえるブームを巻き起こしている。目を見張るのは観客動員数だけでなく、関連グッズの多さだ。二番煎じ以降になると、効果もそが…

東洋大学大学院国際観光学部客員教授 丁野朗

2015年に創設された「日本遺産」は、今年6月、新たに21件が認定、合計104件となり、当初予定の認定数に達した。今後は新たな認定は行わないが、そのさらなる磨き上げに力を入れ…