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テーマ別企業事例 成果を生み出す“次の手”がある 「工・工連携」で切り抜けろ

市場開拓、新製品の開発や設備投資……、中小企業一社では難しい課題がある。そこで、足りない部分を補いさらに強くなるために同じ製造業が互いの市場、技術、設備などを補完し、現状を打破した“工・工連携”の最前線を取材した。

総論 中小企業と商工会議所の連携で 地域の地場産業の創出を目指す

東葛工業人交流会(千葉県東葛地域(柏、松戸、野田、流山、我孫子、鎌ヶ谷市))

東葛工業人交流会は、千葉県北西部の東葛地域にある柏・松戸・野田・流山の4商工会議所と、我孫子市・柏市沼南・野田市関宿・鎌ケ谷市の4商工会の工業部会員約1500社が結集して組成されている。近隣地域の商工団体が連携することで、単体では難しい新規事業や販路開拓などの取り組みが成果を上げている。

柏商工会議所の中島貴洋さん(右)、東大柏ベンチャープラザの原田博文さん(中)、柏商工会議所の小平雄作さん(左)。「東葛地域の近隣にある研究機関や産業支援施設の協力を得たことが大きかったと思います。商工会議所の力だけではここまでできませんでした」と中島さん

市の垣根を越え、製造業が集積する地域全体で連携

東葛工業人交流会は、今から5年前、平成23年12月に柏市内のホテルで第1回が開催された。東葛地域の工業人たちが一堂に会し、情報交換や受発注取引の拡大、新規市場開拓の促進を図る場として行われた。以来、毎年9月に開催されている。この交流会が始まった経緯について、柏商工会議所業務部課長の中島貴洋さんはこのように説明する。

「それまでは各地域の商工会議所が単独で行っていましたが、それでは限界があり、なかなか交流が横に広がっていきませんでした。そこで、東葛地域は製造業が集積しているので、全体で集まって情報交換することで、何か新しいことが生まれるんじゃないかということから、近隣の商工会議所、商工会が協力して始まりました」

そして、以降はビジネスマッチングをメインにした活動にシフトしていくことになる。そこで大きな役割を果たしているのが、東大柏ベンチャープラザである。

東大柏ベンチャープラザは、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が東京大学および地域(千葉県、柏市)と連携して運営する事業化支援施設(大学連携型起業家育成施設)。柏市北部で新たに整備が進む柏の葉キャンパス地区にある。ここには東京大学、千葉大学、国立がん研究センター、東葛テクノプラザなどが集積しており、産・学・官の連携による新産業・新事業の創出に向けた取り組みが行われている。この東大柏ベンチャープラザでチーフインキュベーションマネージャーを務める原田博文さんが、翌24年の第2回から積極的に関わっていくことになる。

「第2回は、元請け企業が海外に製造拠点を移してしまい、経営の厳しくなっている下請け企業のなすべきことがテーマでした。昔ならば仲間同士で仕事を融通しあうこともできましたが、今は残った企業がどれだけ自社の技術を先鋭化させていくか、どのようにして大企業との連携を図っていくかということに意識が変わってきました」と原田さんは振り返る。

研究機関や産業支援施設との連携深める

「そこで、つくば市に研究拠点がある産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)との産学官連携を進めていきました。産総研の方を交流会に招き、中小企業にも活用できる先端技術の紹介や、中小企業と産総研の連携事例などを発表していただきました。また、産学官連携を活用して製品を開発し、下請けから脱却した地元企業による講演も行いました」(原田さん)

25年の第3回交流会では、ビジネスマッチングに焦点を置き、大手企業2社を招いた。両社の技術ニーズを発表してもらった後に、希望する参加企業との商談会をセッティングした。「徐々に交流会の構成を変化させていったのは、参加企業からの要望もあったからです」と、柏商工会議所業務部業務課主査の小平雄作さんは言う。

「参加者から、最終的には仕事を受注したいという要望が増えてきました。そこで、手探りながらも形を変えていき、大手企業のニーズ発表を受けて商談会という流れができてきました。中小企業単独では大手企業からニーズを聞き出すのはなかなか難しい。製造業1500社で組織される東葛工業人交流会の規模を生かすとともに、東大柏ベンチャープラザさんのご協力もあり、大手企業を招くことができるようになりました。こうして、これなら自分の工場でもできるのではないかというところにまで結びつけていくことができました」

またこの年から、千葉県産業振興センター、産総研、つくば研究支援センター、TXアントレプレナーパートナーズも協力団体に加わり、「東葛・つくば広域ビジネスマッチングプロジェクト」として活動範囲をさらに広げ、東葛地域という枠組みを越えた活動をしている。

商談会とセミナーの開催で 医療機器分野へ参入

25年からは、毎年10月の東大柏キャンパス一般公開に合わせ、キャンパス見学会ツアーも実施している。そこでは、最先端研究施設の見学や東大の研究者との交流会などを行い、新たな技術開発やビジネスのきっかけづくりを推進している。そして26年からは柏商工会議所が中心となり、東葛工業人交流会などとともに、東京都文京区で医療機器製販企業との展示商談会も開催している。

「文京区本郷には、医療機器の関連企業が300社以上集積しています。経済産業省が中小企業の医療機器分野への参入を推進しており、それならこちらから積極的に売り込んでいこうということで始めました」(中島さん)

中小企業が医療機器製販企業に売り込んでいくことの利点について、原田さんはこう語る。

「中小企業が医療現場と直接やりとりしようとしても、かなり専門的な分野に入り込むことになり、なかなか難しい。医療機器製販企業は医療現場と密接な関係を持ち、現場のニーズを咀嚼(そしゃく)して発注しています。それらの企業と取り引きすることで、連携を長続きさせることができます。医療機器の部品というと敷居が高いと感じますが、中小企業の技術で製造できるものが意外に多いのです」

それも、中小企業にしてみれば、展示商談会に出てみて初めて分かることだと中島さんは言う。

「例えば美容形成外科では、患者さんに女性が多く、無機質な機械だと殺風景なので、その上にかぶせる明るい色のカバーが欲しいなどというニーズもある。医療は医療ですが、みなさんが考えているような難しいことだけではないんです」

製造業を発展させ 地場産業にすることが目標

第1回から5年がたち、これまでにどのような成果が上がっているのだろうか。

「昨年行った商談会では、成果が上がりそうな案件が数多くあります。以前の商談会でも、互いの工場を行き来しながらすり合わせをしている最中のものや、実際に取り引きが始まっているものもあります。大企業などは一般的に決定までに時間が掛かる場合が多く、商談から1年後に連絡が来たこともあります。いろいろなケースがありますが、徐々に成果が出てきています」(原田さん)

それ以外に、東葛地域同士の企業の間での取り引きが始まるケースも出ているという。

「同じ東葛地域でも、市が違うと意外とお互いを知らないことが多いんです。それが一堂に会することで新たな交流が始まり、地元企業同士で連携して受発注が生まれるといった流れもできています。毎回の参加者は120人前後なのですが、参加する企業が決まってきているので、新たな参加企業をもっと増やしていくことが課題です」(小平さん)

そして、このような活動を行っていくことで、東葛地域の製造業を一層発展させていくことが、東葛工業人交流会の大きな目標となっている。

「埼玉県川口市には鋳物、新潟県燕市には金属加工といった地場産業がありますが、東葛地域にはない。でも逆に、何でもあるんです。それをこれからどのようにして売り込み、東葛地域の地場産業として発展させていくかを考えています。そのためには、われわれ商工会議所の職員がいかに会員企業さんのことを知るかということが重要になってきます」(中島さん)

周辺に研究機関や産業支援施設が集積し、製造業が盛んな東葛地域が、東葛工業人交流会を通じて産学官の連携を強化し、さらなる発展を遂げようとしている。

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